投資の基礎 2026.06.25 2026.06.25

サラリーマンの節税対策13選|年末調整・確定申告で使える制度や資産形成にもつながる方法を解説

サラリーマンの節税対策13選|年末調整・確定申告で使える制度や資産形成にもつながる方法を解説

所得税や住民税は毎月給与から差し引かれるため「節税対策をして手残りを増やしたい」と考えているビジネスパーソンもいるでしょう。実は年末調整や確定申告で利用できる控除や制度は複数あり、これらを正しく申請すれば、今よりも税負担を軽減できる場合があります。

またNISAやiDeCo、不動産投資のように、税制上のメリットを受けながら将来の資産形成を目指せる制度・方法もあります。節税だけではなく資産形成も考えている方は、こうした制度や仕組みを活用することで、税負担の軽減と将来への備えを両立できる可能性もあるでしょう。ただし、制度ごとに適用条件や控除できる上限額、手続き方法は異なるため、仕組みを理解した上で活用することが大切です。

本記事では所得税・住民税の仕組みや、年末調整・確定申告で利用できる主な節税対策、資産形成も期待できる制度・方法を解説します。無理なく税負担を抑えたい方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は、2026年6月時点の情報です

この記事で分かること

  • ビジネスパーソンが節税を検討する際は、年末調整で申請できる控除や確定申告が必要な控除、資産形成にもつながる制度の中から、自分に適用できるものを確認することが大切
  • 年末調整や確定申告をする際は、控除証明書や領収書などを提出・保管する必要がある
  • 制度ごとの適用条件や控除上限を正しく理解しないと、想定した節税効果を得られなかったり、支出が増えて手元に残るお金が減ったりする可能性がある

サラリーマンの節税に関わる所得税・住民税の仕組み

サラリーマンの給与からは、主に所得税・住民税・社会保険料が差し引かれます。このうち、節税対策によって負担を軽減しやすいのは所得税と住民税です。

所得税は、1年間の所得を基に計算される税金です。以下の流れで計算されます。

  1. 給与収入から給与所得控除などを差し引く(給与所得)
  2. 基礎控除や扶養控除、生命保険料控除などの所得控除を差し引く(課税所得)
  3. 課税所得に税率を掛ける(所得税額)
  4. 住宅ローン控除などの税額控除があれば差し引く

所得税は累進課税方式が採用されており、課税所得が大きくなるほど高い税率が適用される仕組みです。課税所得金額に応じて5%〜45%の税率が定められています。

一方、住民税は前年の所得を基に計算され、所得に応じて負担が変わる「所得割」と、一定額を負担する「均等割」で構成されています。所得割の税率は原則10%で、前年の所得が多いほど住民税の負担も大きくなる仕組みです。

ビジネスパーソンの場合、所得税は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整によって過不足が精算されます。そのため年末調整で申請できる控除を漏れなく反映したり、必要に応じて確定申告を行ったりすることで、課税対象となる所得を減らせる場合があります。

また所得控除だけではなく、住宅ローン控除のように所得税額から直接差し引ける税額控除も節税対策になる控除の一つです。これらを正しく理解し、ご自身が適用できるものを申請しましょう。

年末調整で申請できるサラリーマンの節税対策4選

先述した通り、ビジネスパーソンの場合、勤務先で年末調整を受けることで、所得税の過不足が精算されます。年末調整で申請できる控除であれば、原則として自分で確定申告をしなくても税負担を調整できるため、手間をかけずに節税が可能です。

ただし、控除ごとに適用条件や対象者、控除額の上限は異なります。また申請漏れがあると、本来受けられる控除を反映できない可能性があるため、ご自身が該当する制度を確認しておきましょう。

年末調整で申請できる主な所得控除は、以下の通りです。

控除の種類
概要
扶養控除
16歳以上の子どもや親など、生計を一にする親族を扶養している場合に受けられる所得控除
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の所得が一定額以下の場合に、納税者本人の所得に応じて受けられる所得控除
生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている場合に受けられる所得控除
地震保険料控除
居住用建物や家財に対する地震保険料を支払っている場合に受けられる所得控除

なお、控除額や適用条件は、所得税と住民税で異なる場合があります。以下では、主に所得税における控除額の目安をご紹介します。

扶養控除

扶養控除とは、16歳以上の子どもや親など、生計を一にする親族を扶養している場合に受けられる所得控除です。納税者の給与所得から一定額を差し引けるため、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。

扶養控除の対象となる親族は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 配偶者以外の親族であること
  • 生計を一にしていること
  • その年の12月31日時点で16歳以上であること
  • 対象となる親族の年間合計所得金額が58万円以下、給与収入のみの場合は123万円以下であること

対象の親族や控除額は、以下の通りです。

区分
対象(年齢はその年の12月31日時点)
控除額
一般の控除対象扶養親族
  • 16歳以上30歳未満の親族
  • 年齢が30歳以上70歳未満で以下に当てはまる親族
    • 留学により国内の住所がない
    • 障がい者
    • 納税者から生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている
38万円
特定扶養親族
年齢が19歳以上23歳未満の親族
63万円
老人扶養親族
年齢が70歳以上かつ同居をしていない親族
48万円
老人扶養親族
年齢が70歳以上かつ同居をしている親族
58万円

扶養控除を受けるには、年末調整の際に扶養控除等申告書へ対象となる親族の情報を記載します。別居している親族でも、生計を一にしていると認められる場合は対象になる可能性があるため、仕送りの有無なども含めて確認しておきましょう。

※参考:国税庁.「No.1180 扶養控除」.(参照:2026-06-09).

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者控除・配偶者特別控除は、配偶者の所得が一定額以下の場合に受けられる所得控除です。配偶者の収入状況や納税者本人の所得に応じて、控除の有無や金額が変わります。

配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計を一にする配偶者の年間合計所得金額が58万円以下の場合に受けられる控除です。一方配偶者特別控除は、配偶者の所得が配偶者控除の範囲を超える場合でも、一定額以下であれば段階的に控除を受けられる制度です。配偶者がパートやアルバイトで働いている場合、収入が増えると控除額が変わるため、年末調整の前に配偶者の年間収入や所得を確認しておきましょう。

なお、配偶者控除・配偶者特別控除は、納税者本人の所得が高いほど控除額が小さくなり、合計所得金額が1,000万円を超えると適用できません。配偶者の所得だけではなく、ご自身の所得要件も併せて確認することが大切です。

※参考:国税庁.「No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」.(参照:2026-06-09).

生命保険料控除

生命保険料控除とは、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている場合に受けられる所得控除です。万が一の保障や老後資金の準備として保険に加入している方は、年末調整で申請できる可能性があります。

2012年1月1日以降に契約した新契約の場合、生命保険料控除は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3区分に分かれます。それぞれ所得税で最大4万円、合計で最大12万円まで控除を受けることが可能です。

控除を受けるには、保険会社から届く生命保険料控除証明書を年末調整時に提出する必要があります。複数の保険に加入している場合や、旧契約と新契約が混在している場合は、控除額の計算が複雑になることもあるため、証明書の内容を確認して正しく申請しましょう。

ただし、生命保険料控除は、支払った保険料の全額がそのまま税金から差し引かれる制度ではありません。あくまで一定額を所得から控除する仕組みのため、節税だけを目的に不要な保険へ加入するのは避け、保障内容や家計とのバランスを踏まえて検討することが大切です。

※参考:国税庁.「No.1140 生命保険料控除」.(参照:2026-06-09).

地震保険料控除

地震保険料控除とは、自身や生計を一にする家族が所有する居住用建物・家財に対して、地震保険料を支払っている場合に受けられる所得控除です。地震や噴火、津波による損害に備える保険料について、一定額を所得から差し引けます。

所得税では、年間の地震保険料のうち最大5万円までが控除額となります。なお、旧長期損害保険料に関する経過措置が適用されるケースもありますが、地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合でも、所得税の控除額の上限は5万円です。

地震保険料控除を受けるには、保険会社から届く控除証明書を年末調整で提出します。火災保険に加入していても、地震保険部分がなければ地震保険料控除の対象にはならないため、注意してください。地震保険は、節税効果だけではなく災害時の備えとしても役立つ保険です。控除を受けられるかどうかを確認しつつ、住まいのリスクに応じて必要な補償を検討しましょう。

※参考:国税庁.「No.1145 地震保険料控除」.(参照:2026-06-09).

確定申告が必要なサラリーマンの節税対策6選

年末調整で申請できる控除がある一方で、確定申告をしなければ適用を受けられない控除や制度もあります。年末調整が済んでいても、条件に該当すれば確定申告を行うことで、所得税の還付や住民税の軽減につながります。

制度や控除によっては、領収書や証明書、明細書などの保管をする必要があるため、併せて確認しておきましょう。

確定申告が必要になる主な節税対策は、以下の通りです。

控除・制度
概要
医療費控除
1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除
セルフメディケーション税制
対象となる市販薬の購入額が一定額を超えた場合に受けられる医療費控除の特例
ふるさと納税
自治体へ寄付することで、一定の限度額内で所得税・住民税の控除を受けられる制度
住宅ローン控除の初年度申請
住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合などに受けられる税額控除
特定支出控除
仕事に必要な支出を自費で負担し、一定額を超えた場合に受けられる所得控除
雑損控除
災害や盗難、横領などで生活に必要な資産に損害を受けた場合に受けられる所得控除

なお、控除額や適用条件は、所得税と住民税で異なる場合があります。以下では、主に所得税における控除額の目安をご紹介します。

医療費控除

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除です。年末調整では申請できないため、適用を受けるには確定申告を行う必要があります。

医療費控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費です。自身の医療費だけではなく、生計を一にする配偶者や子ども、親族のために支払った医療費も含められます。診療費や治療費の他、通院のための交通費なども対象になる場合があります。

控除額を算出する計算式は以下の通りです。

  • (その年中に支払った医療費の合計 – 保険金などで補填される金額) – 10万円または総所得金額等の5%のいずれか少ない方

控除額の上限は200万円です。医療費控除を受けるには、医療費控除の明細書を確定申告書に添付し、医療費の領収書は自宅で5年間保管する必要があります。

なお医療費控除は、対象年の翌年1月1日から5年間、さかのぼって還付申告が可能です。申告していなかった年がある場合は、税金が戻ってくる可能性があるため、確認してみましょう。ただし、美容目的の施術や健康増進を目的とした費用など、治療に直接関係しないものは対象外となる場合があります。

※参考:国税庁.「医療費控除を受ける方へ」.(参照:2026-06-09).

※参考:国税庁.「No.2030 還付申告」.(参照:2026-06-09).

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進や疾病予防のための一定の取り組みを行っている方が、対象となる市販薬を購入した場合に受けられる医療費控除の特例です。スイッチOTC医薬品などの特定一般用医薬品などが対象となります。

控除額は、対象医薬品の購入費から保険金などで補填された金額を差し引き、さらに1万2,000円を超えた部分で、控除額の上限は8万8,000円です。

対象商品は、レシートに印が付いていたり、商品名の横に対象であることが記載されていたりします。セルフメディケーション税制を利用するには、対象商品の購入額が分かるレシートや明細を保管しておきましょう。

なお、セルフメディケーション税制は通常の医療費控除との併用はできません。一度どちらかを選択して申告すると、後から選択を変更できない場合があります。そのため医療費と対象医薬品の購入額を確認し、どちらを利用した方が良いか比較した上で申告しましょう。

※参考:国税庁.「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】」.(参照:2026-06-09).

ふるさと納税

ふるさと納税とは、任意の自治体に寄付を行うことで、一定の限度額内で所得税や住民税の控除を受けられる制度です。寄付金額から自己負担額の2,000円を差し引いた金額が、所得税と翌年度の住民税から控除されます。そのため実際には節税というよりも、翌年度の税金の前払いに近いです。

ふるさと納税は、寄付先の自治体から返礼品を受け取れる点も特長です。ただし、控除を受けられる金額には上限があり、年収や家族構成、他の控除の有無によって変わります。控除限度額を超えて寄付した分は自己負担となるため、事前にシミュレーションしておくことが大切です。

ビジネスパーソンの場合、寄付先の自治体が5つ以内でワンストップ特例の申請を行っていれば、原則として確定申告は不要です。 一方6つ以上の自治体に寄付した場合や、医療費控除・住宅ローン控除の初年度申請などで確定申告を行う場合は、ふるさと納税分も確定申告で申告する必要があります。

ワンストップ特例制度を利用していても、確定申告を行うと特例の申請は無効になります。その場合、ふるさと納税分を申告し忘れると控除を受けられない可能性があるため、寄付金受領証明書などを保管し、確定申告時に忘れずに申告しましょう。

※参考:国税庁.「ふるさと納税をされた方へ」.(参照:2026-06-09).

住宅ローン控除の初年度申請

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得・増改築した場合などに、一定の要件を満たすことで受けられる税額控除です。課税所得に税率を乗じて算出する所得税額から控除額を直接差し引けるため、税負担を軽減する効果が大きい制度といえます。

令和4年以降に居住を開始した場合、住宅の種類や居住開始年などに応じて控除期間や控除限度額が異なります。令和6年・令和7年に居住を開始した認定住宅等や省エネ基準適合住宅などでは、年末残高等の0.7%を基に控除額が計算され、控除期間は原則13年です。

住宅ローン控除を初めて受ける年は、ビジネスパーソンでも確定申告が必要です。2年目以降は、勤務先の年末調整で手続きできる場合があります。年末調整で申請する際は、住宅借入金等特別控除申告書や、住宅ローンの年末残高証明書などを勤務先に提出しましょう。

※参考:国税庁.「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」.(参照:2026-06-09).

特定支出控除

特定支出控除とは、ビジネスパーソンが仕事に必要な支出を自費で負担し、その金額が一定額を超えた場合に受けられる所得控除です。通常、給与所得者には給与所得控除がありますが、特定支出が多い場合は、確定申告により追加で控除を受けられる可能性があります。

対象となる特定支出には、通勤費や転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費などが挙げられます。勤務必要経費とは、職務に関係する図書費、衣服費、交際費などです。

特定支出控除を受けるには、確定申告が必要です。申告の際は、特定支出に関する明細書に加え、給与の支払者またはキャリアコンサルタントの証明書、支出の事実や金額を証明する書類などを添付または提示する必要があります。

ただし、仕事に関係する支出であれば何でも対象になるわけではありません。勤務先の証明が必要になるため、資格取得費や研修費などを自費で負担した場合は、申告前に対象となるか確認しておきましょう。

※国税庁.「No.1415 給与所得者の特定支出控除」.(参照:2026-06-09).

雑損控除

雑損控除とは、災害や盗難などによって、生活に必要な資産に損害を受けた場合に受けられる所得控除です。対象となる資産には、住宅や家財、衣服などが含まれます。一方、事業用資産や別荘、貴金属・書画・骨とうなどで一定のものは、対象外となる場合があります。

雑損控除の対象となる損害は、震災や風水害、火災などの災害の他、盗難や横領による損害です。詐欺や恐喝による被害は、雑損控除の対象にはなりません。

控除額は、次の2つの計算式で算出した金額のうち、いずれか多い方です。

  • 損害金額 + 災害等関連支出の金額 – 保険金等の額 – 総所得金額等 × 10%
  • 災害関連支出の金額 – 保険金等の額 – 5万円

雑損控除を受けるには、確定申告が必要です。災害や盗難などで損害を受けた場合は、被害状況が分かる書類や、修繕費用・撤去費用などの領収書、保険金の支払通知書などを保管しておきましょう。

※参考:国税庁.「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」.(参照:2026-06-09).

節税だけではなく資産形成も期待できる制度・方法3選

ビジネスパーソンが活用できる制度や方法の中には、税負担の軽減だけではなく、将来の資産形成につながるものもあります。代表的なものが、NISA・iDeCo・不動産投資です。

それぞれ仕組みや目的、リスクが異なります。NISAは運用益が非課税になる制度、iDeCoは老後資金の準備を目的とした私的年金制度、不動産投資は家賃収入を得ながら中長期で資産形成を目指す方法です。節税効果だけに注目するのではなく、制度の内容やリスクを理解した上で、ご自身に合う方法を検討しましょう。

制度・方法
概要
NISA
一定の投資枠内で得られる運用益が非課税になる制度
iDeCo
老後資金を準備するための個人型確定拠出年金。掛金が全額所得控除の対象になる
不動産投資
家賃収入を得ながら中長期で資産形成を目指す方法。必要経費の計上や損益通算により、税負担を軽減できる場合がある

NISA

NISAは、一定の投資枠内で得られる運用益が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などの売却益・配当金・分配金には税金がかかりますが、NISA口座内で運用した場合、非課税で受け取れます。

2024年から始まった新しいNISAでは、つみたてNISAが「つみたて投資枠」に、一般NISAが「成長投資枠」に引き継がれました。両者を併用することで、毎月一定額を積み立てたり、個別株式や投資信託などに一括投資したりすることが可能です。年間投資枠は最大360万円あり、非課税保有限度額は生涯で最大1,800万円、非課税保有期間は無期限です。

ただし、NISAはあくまでも運用益にかかる税金が非課税になる制度です。所得控除や税額控除の制度ではないため、所得税や住民税が直接下がるわけではありません。また投資信託や株式などで運用するため元本保証はなく、価格変動によって損失が出る可能性があります。運用益にかかる税負担を抑えながら資産形成を目指せる制度として理解しておきましょう。

※参考:金融庁.「NISAを知る」.(参照:2026-06-09).

iDeCo

iDeCoは、老後資金を準備するための個人型確定拠出年金です。自分で掛金を拠出し、投資信託や保険商品などを選んで運用し、原則として60歳以降に年金または一時金として受け取ります。

iDeCoの大きな特長は、税制上の優遇があることです。加入者が拠出した掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。また運用中の利益は非課税で、受け取る際にも年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象になります。

所得控除と公的年金等控除・退職所得控除、運用益の非課税メリットを受けられるため、iDeCoは節税と老後資金の準備を同時に進めたいビジネスパーソンに向いている制度といえるでしょう。

ただし、iDeCoは老後資金の形成を目的とした制度のため、原則として60歳になるまで資産を引き出せません。 住宅購入資金や教育費など、近い将来使う予定のあるお金を拠出してしまうと、家計に支障が出る可能性があります。勤務先に企業型確定拠出年金(企業DC)がある場合は、加入条件や掛金の上限も変わるため、制度内容を確認した上で検討しましょう。

※参考:厚生労働省.「iDeCoの概要」.(参照:2026-06-09).

不動産投資

不動産投資とは、不動産投資ローンなどを利用して物件を購入し、第三者に貸し出すことで家賃収入を得る投資方法です。毎月の家賃収入を活用しながらローンを返済し、中長期で資産形成を目指せる点が特長です。

不動産投資が節税につながる理由は、大きく分けて「損益通算できること」と「確定申告時に控除を受けられる場合があること」が挙げられます。それぞれの仕組みや概要について詳しく解説します。

不動産所得の赤字を損益通算できる場合がある

不動産投資では、家賃収入などの総収入金額から必要経費を差し引いて不動産所得を計算します。必要経費には、ローンの利息や管理委託費、修繕費、固定資産税、減価償却費など賃貸業を行う上で必要な項目を計上するのが一般的です。

中には減価償却費のように、その年に現金の支出を伴わない費用を計上できる場合もあるため、不動産所得が赤字になることもあります。この赤字は、一定の条件を満たせば給与所得などの他の所得と相殺(損益通算)することが可能です。損益通算によって課税所得が減れば、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。

ただし、不動産所得の赤字であれば全て損益通算できるわけではありません。例えば土地などを取得するために要した借入金の利子に相当する部分は、損益通算の対象外とされています。

青色申告特別控除を受けられる場合がある

不動産所得がある場合、確定申告では白色申告または青色申告を選択します。白色申告には特別控除がありませんが、青色申告では一定の要件を満たすことで10万~最大65万円の青色申告特別控除を適用できます。

青色申告特別控除を適用するには、一般的に事業的規模であることなどが必要です。不動産投資の場合は「戸建5棟以上、もしくは集合住宅10室以上」を保有しているかどうかで判断されます。戸建1棟は集合住宅の2室に相当するため、例えば「戸建2棟と集合住宅6室」のような組み合わせでも基準を満たす可能性があります。

ビジネスパーソンが事業的規模で不動産投資を行う場合、勤務先の副業規定に抵触しないか確認しておくことも重要です。会社によっては副業届の提出が必要な場合や、副業そのものを制限している場合があります。青色申告のメリットだけで判断せず、勤務先のルールや運用規模を確認した上で進めましょう。

副業禁止の企業で不動産投資を行いたいと考えている方は、以下の記事も併せてご覧ください。

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サラリーマンが節税対策を行う際の注意点

節税対策は、制度を正しく理解した上で利用することが重要です。適用条件や控除ごとの上限額を確認せずに利用すると、想定していた節税効果を得られない場合があります。

また支出を増やせば必ず得になるわけではありません。支出と節税のバランスが崩れるとかえって手元に残るお金が減ってしまう可能性もあります。

ここでは、ビジネスパーソンが節税対策を行う際に確認しておきたい注意点を解説します。

制度ごとの適用条件や控除上限を確認する

節税対策を検討する際は、制度ごとの適用条件や控除ごとの上限額を確認しましょう。控除を受けられると思っていても、所得や家族構成、支払額などの条件を満たしていなければ、適用できない場合があります。

例えばふるさと納税では、年収や家族構成、他の控除の有無などに応じて、寄付できる上限額が変わります。上限を超えて寄付した分は自己負担となるため、想定よりも出費が増えてしまうこともあるでしょう。

また扶養控除や配偶者控除は、親族や配偶者の年間所得額などによって適用可否が変わります。パートやアルバイトの収入がある家族を扶養している場合は、いわゆる「年収の壁」にも注意が必要です。

生命保険料控除やiDeCoなども、それぞれ控除できる上限や支払い枠が決まっています。さらに、令和7年に所得税の基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の創設などが行われたように、制度改正によって条件が変わることもあり得ます。

節税対策を行う際は国税庁や自治体、金融機関が公表する最新情報を確認しましょう。

年末調整と確定申告のどちらで手続きするか確認する

各種控除は年末調整で申請できるものと、確定申告が必要なものに分かれます。制度ごとに手続き方法が異なるため、どちらで申請するのかを事前に確認しておきましょう。

例えば生命保険料控除や地震保険料控除、iDeCoの掛金に関する小規模企業共済等掛金控除などは、勤務先の年末調整で手続きできます。一方、医療費控除やセルフメディケーション税制、住宅ローン控除の初年度申請、雑損控除などは、原則として確定申告が必要です。

また年末調整で申請し忘れた控除がある場合でも、確定申告で対応できることがあります。控除証明書や領収書、明細書などは、申告時〜一定期間が過ぎるまで保管する必要があるため、紛失しないよう管理しておきましょう。

節税目的だけで支出を増やさない

節税対策を行う際は、控除額を増やすことだけに意識を向けすぎないことが大切です。控除を受けるために支出を増やしても、支払った金額以上に税金が戻ってくるとは限りません。

例えば不動産投資の投資物件を選定する際に、節税効果だけを重視してしまうと、入居者が付きにくい物件を購入してしまう恐れがあります。いくら経費としてさまざまな項目を計上できるとしても、家賃収入が見込めなければ投資として継続することは難しいでしょう。

節税はあくまでも必要な支払いをした結果として、支払う税金が減るという順序で考えるものです。支出額やリスク、資金拘束、将来の家計への影響を確認し、収支とのバランスを考えながら活用しましょう。

サラリーマンが使える制度は意外と多い! 賢く利用し無理なく節税しましょう

ビジネスパーソンが年末調整や確定申告を通じて利用できる節税対策は、複数あります。扶養控除や配偶者控除、生命保険料控除、地震保険料控除のように年末調整で申請できるものもあれば、医療費控除や住宅ローン控除の初年度申請、雑損控除のように確定申告が必要なものもあります。

節税対策を行う際は、まず所得税・住民税の仕組みを理解し、ご自身が使える控除や制度を確認することが大切です。制度やご自身の家族構成、年収などによって適用条件や控除できる上限額、手続き方法は異なるため、申請漏れや誤った申告がないよう注意しましょう。

また節税額だけに注目するのではなく、支出額や将来の資産形成、家計への影響も踏まえて方法を選ぶ必要もあります。NISAやiDeCo、不動産投資などは、税制上のメリットを得ながら資産形成を進められます。それぞれメリットや注意点が異なるため、ご自身の目的と照らし合わせながら適した方法を選択しましょう。

不動産投資による資産形成を検討している方は、立地や収支シミュレーション、購入後の管理体制まで確認することが重要です。エスリード株式会社は、関西を中心に新築分譲マンションの開発・販売を行っている東証プライム市場上場の不動産デベロッパーです。エスリードグループでは、分譲マンションの販売から管理・仲介まで一貫した事業を展開しているため、不動産投資による資産形成についてのアドバイスを行っています。

サラリーマンが資産形成や節税を無理なく進めるには、制度の活用と長期的な収支計画の両方が欠かせません。不動産投資を選択肢の一つとして検討している方は、ぜひエスリードへご相談ください。

監修者プロフィール
山田 太郎

田端 俊之
エスリード株式会社
営業部営業戦略室 次長

1999年 日本エスリードに入社、営業部門、開発部門を経て2002年から企画・マーケティング部門に従事。 携わったマンションの販売企画は100物件を超え、CM制作や自社主催のセミナー講師も務める。

マーケティング室の統括責任者として長年市場分析やマーケティング戦略業務に従事してきた経験を活かし、デベロッパーの市場分析目線から《マンション経営》をわかりやすくお伝えします。

関西の国立大学で経済学・マーケティングを学び、1999年に日本エスリードに入社。
入社以来、企画及びマーケティングを担当し、マーケティング室の統括責任者として市場分析やマーケティング戦略業務を担う。

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不動産投資の基礎知識 2026.07.10 不動産価格の評価方法とは? 収益還元法・取引事例比較法・原価法の違いを解説 不動産価格を評価する方法には、収益還元法・取引事例比較法・原価法があります。それぞれ収益性・市場性・費用性という異なる観点から価格を算出するため、同じ不動産でも評価方法によって価格が異なる場合があります。 特に投資用不動産を購入する際は、収益性に見合った価格なのか、周辺相場と比べて妥当なのか、見込まれる融資額はどのくらいかなどを確認することが重要です。各算出方法の違いやそれぞれのメリット・注意点を理解しておくことで、物件価格を多角的に判断しやすくなります。 本記事では、収益還元法・取引事例比較法・原価法の仕組みを解説します。目的別に適した評価方法もご紹介するので、投資用不動産の購入価格や売却価格の妥当性を確認したい方はぜひ参考にしてください。 suggest2 収益還元法は、投資用不動産から得られる家賃収入や将来の売却想定価格などを基に、物件価格の妥当性を評価する方法 取引事例比較法は、近隣や類似エリアで実際に取引された不動産価格を基に、市場価格を評価する方法 原価法は、対象不動産を再調達した場合にかかる費用を基に、土地や建物の資産価値を評価する方法 不動産投資では、目的に応じて複数の評価方法を組み合わせ、価格の妥当性を確認する必要がある 不動産価格を評価する際に重要な「価格の三面性」 不動産価格を評価する際は、一つの観点だけではなく、収益性・市場性・費用性の3つの観点から検討することが重要です。これらは「価格の三面性」と呼ばれ、不動産の価値を多角的に捉えるための基本的な考え方といわれています。 価格の三面性と、それぞれに対応する主な評価方法は以下の通りです。 観点 概要 主な評価方法 収益性 その不動産を賃貸や事業に活用した場合、どのくらいの収益を生むかを基に価格を評価する考え方 収益還元法 市場性 周辺地域で類似する不動産がどの程度の価格で取引されているかを基に価格を評価する考え方 取引事例比較法 費用性 その不動産を取得・造成・建築するためにどの程度の費用がかかるかを基に価格を評価する考え方 原価法 不動産は立地や面積、形状、築年数、周辺環境などがそれぞれ異なり、全く同じものは存在しません。そのため一つの評価方法だけで価格を判断すると、実際の価値や市場での評価とズレが生じる可能性があります。 例えば昔から取引が多い住宅地域であれば、周辺の取引事例を参考にすることでおおよその価格を把握しやすいでしょう。一方山を切り開いて造成された新しい住宅団地のように、類似する取引事例が少ない場合は、取引事例比較法だけでは価格を算出しにくいケースもあります。このような場合は造成や建築にかかった費用、将来的に見込まれる収益など、別の観点も踏まえて評価する必要があります。 このように不動産価格を評価する際は、収益還元法・取引事例比較法・原価法によって算出した価格を同じ重みで見るのではなく、対象不動産の種類や用途、地域性、取引目的に応じて重み付けを行うのが一般的です。 収益性から不動産価格を評価する「収益還元法」 ここからは、価格の三面性に対応する主な評価方法を解説します。まずは、収益性から不動産価格を評価する「収益還元法」です。 収益還元法とは、投資用不動産が将来生み出すと期待される収益を基に、不動産価格を算出する方法です。不動産投資では、利回りなどを基に物件の収益性を確認します。ただし、年間の想定賃料を物件価格で割って算出する「表面利回り」だけでは、空室率や運営費用などを十分に反映できず、価格が収益力に見合っているか判断しにくい側面があります。その点収益還元法では、物件が将来生み出すと期待される収益を基に価格を算出するため、物件の稼ぐ力を価格に反映することが可能です。投資対象として無理のない価格かどうかも判断しやすくなるでしょう。 例えば老後の資産形成を目的に不動産投資を行う場合、周辺の取引事例だけを見ると魅力的な物件でも、十分な家賃収入が得られなければ、投資対象として適しているとはいえません。収益還元法で価格と家賃収入のバランスを確認できれば、賃料収入に対して割高な物件や、投資効率の低い物件を避けやすくなります。 直接還元法 収益還元法には、主に「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。それぞれ計算方法や向いている場面が異なるため、違いを理解しておきましょう。 直接還元法とは、投資用不動産が1年間に生み出す純収益を還元利回りで割り、不動産価格を算出する方法です。以下の計算式で算出します。 不動産価格 = 1年間の純収益 ÷ 還元利回り 純収益とは、家賃収入から管理費や修繕費、固定資産税、保険料などの諸経費を差し引いた金額です。正確な家賃収入を把握するには、不動産会社からレントロール(契約条件の一覧表)を提示してもらい、現在の賃料や入居状況、空室の有無などを確認しましょう。 また還元利回りとは、その物件に期待される投資利回りのことです。地域や築年数、物件の種類、空室リスクなどによって変わるため、類似物件の取引事例やキャップレートマップのような市場データを参考にして設定します。還元利回りの設定によって算出される価格は大きく変わるため、相場から大きく外れた数値を使わないことが重要です。 DCF法 DCF法とは、将来得られる純収益や売却価格を現在価値に割り戻して、不動産価格を算出する方法です。保有期間中の家賃収入、空室率、運営費用、将来の売却価格などを加味するため、直接還元法よりも実態に即した物件価格を算出できます。 計算式は以下の通りです。 不動産価格 = 保有期間中に得られる各年の純収益の現在価値の合計 + 売却想定価格の現在価値 ここで重要なのが「将来受け取るお金は、現在のお金と同じ価値ではない」という考え方です。例えば将来100万円を受け取れるとしても、物価上昇などが起これば今すぐ受け取る100万円とは価値が異なります。そのためDCF法では将来の収益をそのまま足し合わせるのではなく、割引率を使って現在価値に直してから計算します。 例えば各年100万円の純収益があり、割引率を5%、保有期間を5年とした場合、各年の純収益の現在価値は以下の通りです。 1年目:100万円 ÷ 1.05 = 約95.2万円 2年目:100万円 ÷ 1.05² = 約90.7万円 3年目:100万円 ÷ 1.05³ = 約86.4万円 4年目:100万円 ÷ 1.05⁴ = 約82.3万円 5年目:100万円 ÷ 1.05⁵ = 約78.4万円 空室率を加味する場合は、現在価値に割り戻す前に、各年の家賃収入に空室による減収を反映します。その上で諸経費を差し引き、年ごとの純収益を算出しましょう。 保有期間終了後の売却を想定する場合は、その売却想定価格も現在価値に割り戻して『復帰価格』を算出します。例えば、5年後の売却想定価格が2,000万円、割引率が5%の場合の計算式は、以下の通りです。 2,000万円 ÷ 1.05⁵ = 約1,567.1万円 最後に、各年の純収益の現在価値と売却想定価格の現在価値を合計します。 約95.2万円 + 約90.7万円 + 約86.4万円 + 約82.3万円 + 約78.4万円 + 約1,567.1万円 = 約2,000.1万円 このようにDCF法では、将来の収益や売却価格を現在価値に直して評価します。ただし、空室率や割引率、売却価格など多くの前提を置く必要があるため、計算は複雑になりやすいです。実際に活用する場合は、不動産会社に相談しながら試算するとよいでしょう。 収益還元法が向いている不動産 収益還元法は、利回りや将来の収益力を重視して評価したい不動産に向いています。具体的には賃貸マンションや一棟アパート、一棟マンション、オフィスビル、商業施設などが挙げられます。 大まかな収益性を手早く把握したい場合は直接還元法、長期保有を前提により精度の高い試算をしたい場合はDCF法での算出がおすすめです。購入前の検討段階では直接還元法で大まかな価格感を確認し、具体的に購入を検討する段階でDCF法による詳細なシミュレーションを行うといった使い分けもできます。 先述した通り、不動産投資をする上では、物件の収益性を確認することが欠かせません。融資額の算出では、土地や建物の価値を基にした積算価格が参考にされることもありますが、積算価格が高いからといって投資対象として優れているとは限りません。購入を検討する際は、収益還元法によって収益力に見合った価格かどうかも確認し、投資対象として適しているかを判断しましょう。 積算価格について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。 積算価格とは? 実勢価格との違いや計算方法、不動産投資で重要な理由を解説 収益還元法の注意点 収益還元法は、投資用不動産の収益性を確認する上で有効な方法ですが、前提条件によって評価額が大きく変わる点に注意が必要です。 例えば想定家賃を高く設定しすぎると、不動産価格が実態よりも高く算出される可能性があります。空室率や割引率、還元利回りなどが実態に即していない場合も、実際の収益性とのズレが生じやすくなるでしょう。 また収益還元法は家賃収入を基に価格を算出するため、想定家賃を引き上げれば評価額も高く見えやすくなります。一見魅力的な物件に見えても、いざ運用し始めたら想定家賃が周辺相場と比べて著しく高かったという事態に陥ってしまいかねません。入居者が付かなかったり、早い段階で家賃を下げなければならなかったりすると、購入前のシミュレーションの前提が大きく崩れてしまうでしょう。 収益還元法で試算する際は、前提条件に問題がないか周辺の物件状況などと比較しながら確認する必要があります。また評価額はあくまで一定の前提に基づく試算であるため、複数のシナリオで収支を確認し、無理のない投資判断につなげることが重要です。 市場性から不動産価格を評価する「取引事例比較法」 取引事例比較法とは、近隣地域や類似エリアで実際に取引された不動産の価格を基に、対象物件の価格を評価する方法です。収益還元法が不動産の収益力に着目するのに対し、取引事例比較法では、市場でどの程度の価格で売買されているかを重視します。 取引事例比較法は実際の売買事例を参考にするため、現在の市場価格に近い価格を把握しやすい点が特長です。土地や戸建て、区分マンションなど、周辺に類似物件の取引事例が多い際に使われることが多く、購入価格や売却価格の妥当性を確認する際にも役立ちます。 取引事例比較法の計算方法 取引事例比較法では、実際に取引された類似不動産の価格を基に、対象不動産の価格を算出します。主な流れは以下の通りです。 近隣・類似エリアの取引事例を収集する 取引事例に必要な補正を加える 対象不動産の条件を反映して価格を算出する まず、対象不動産と条件が近い取引事例を収集します。立地や面積、用途、築年数、駅からの距離などが近く、できるだけ直近に取引された事例を選ぶことが重要です。取引事例は不動産会社が利用する物件情報ネットワークシステムのレインズなどに記録されているため、価格を検討する際は不動産会社へ相談し、参考になる成約事例を確認してもらうとよいでしょう。 次に、収集した取引事例に補正を加えます。実際の取引価格は、売り急ぎや買い進み、市場の変動、地域差、物件ごとの個別条件などの影響を受けるため、そのまま対象不動産に当てはめることはできません。主な補正項目は以下の通りです。 補正項目 概要 事情補正 売り急ぎや買い進みなど、通常の取引とは異なる事情を取り除くための補正 時点修正 取引時点と価格を評価する時点の違いを調整する補正 地域要因の比較 取引事例と対象不動産がある地域の違いを反映する補正 ※駅からの距離、商店街が近くにあるなど 個別的要因の比較 不動産そのものの条件差を反映する補正 ※土地の形状、接道状況、角地かどうか、マンションの階数・方角・管理状態など 最後に、補正後の取引価格を基に、対象不動産の条件を反映して価格を算出します。ただし、どの事例を選ぶか、どの程度補正するかによって評価額が変わります。類似事例の選定や補正には専門的な判断が必要になるため、不動産価格を確認する際は、不動産会社や不動産鑑定士などの専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。 取引事例比較法が向いている不動産 取引事例比較法は、周辺に類似した取引事例が多い不動産の評価に向いています。例えば区分マンションや住宅地、取引量の多いエリアの土地などは、比較対象となる事例を見つけやすいため、取引事例比較法を活用しやすいでしょう。 区分マンションの場合、同じマンション内や近隣エリアで成約事例があれば、階数や方角、専有面積、築年数などを比較しながら価格を検討できます。土地の場合も、同じ地域内に用途や面積、接道条件が近い事例があれば、売買価格の目安を把握しやすくなります。 また取引事例比較法は、不動産を売却する際の価格設定にも有効です。周辺の成約事例を確認することで、相場から大きく外れた価格を設定してしまうリスクを低減できるでしょう。 取引事例比較法の注意点 取引事例比較法は、実際の売買事例を参考にできる点がメリットですが、類似する取引事例が少ない場合は、精度の高い評価が難しくなります。特に取引量が少ないエリアや特殊な形状の土地、個性の強い建物などは、比較対象を見つけにくいことがあります。 また取引事例があっても、築年数や駅からの距離、面積、管理状態、接道状況などが異なれば、単純に比較することはできません。検討している不動産の個別性が強いほど、事例との違いが価格に影響しやすくなります。 戸建ての場合は、土地と建物を分けて検討する必要がある点にも注意が必要です。土地は立地や面積、形状、接道状況などの影響を受け、建物は築年数や構造、間取り、延床面積、管理状態などによって価値が変わります。そのため、土地は取引事例比較法で確認し、建物は原価法で確認するといったように、評価方法を使い分けながら物件を評価しましょう。 費用性から不動産価格を評価する「原価法」 原価法とは、対象となる不動産を再び取得・建築した場合にどの程度の費用がかかるかを基に、不動産価格を評価する方法です。建物を新築した場合の価格から、築年数や劣化状況に応じた価値の減少分を差し引いて価格を求めます。 物理的なコストを基に評価するため、算出根拠が比較的明確である点がメリットです。また周辺に類似する取引事例が少ない場合や、土地と建物の価値を分けて確認したい場合にも役立ちます。 不動産投資では、金融機関が融資額を判断する際に土地や建物の資産価値を参考にすることがあります。そのため原価法の考え方を理解しておくと、担保価値の目安を把握したり、将来の売却を含めた出口戦略を検討したりする際に役立つでしょう。 原価法の計算方法 原価法では対象不動産の再調達原価を求めた上で、築年数や劣化状況などに応じた減価修正を行い、価格を算出します。基本的な計算式は以下の通りです。 不動産価格 = 再調達原価 – 減価修正額 再調達原価とは、対象不動産と同等の建物や土地を、現在新たに取得・建築した場合にかかる費用のことです。再調達原価の算出方法には、大きく分けて「直接法」と「間接法」があります。 算出方法 概要 直接法 対象不動産の建材費や人件費、施工会社の利益、設計費、発注者が負担する付帯費用などを詳しく調査し、現在同じ建物を建てる場合にどの程度の費用がかかるかを積み上げて計算する方法 間接法 類似する不動産の建築費や取引事例、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」などを参考にして再調達原価を求める方法 再調達原価を算出したら、次に減価修正を行います。減価修正とは、築年数の経過や劣化、機能の陳腐化、周辺環境の変化などによって生じる価値の減少を価格に反映することです。主な減価の種類は以下の通りです。 減価の種類 概要 具体例 物理的減価 建物の老朽化や破損など、物理的な劣化による価値の減少 ひび割れ、摩耗、破損、設備の劣化など 機能的減価 設計や設備、間取りなどが現在の需要や利用方法に合わなくなることによる価値の減少 旧式の設備、使いにくい間取り、時代に合わないデザインなど 経済的減価 周辺環境や市場環境の変化による価値の減少 周辺施設の撤退、人口減少、交通利便性の低下など ただし、全ての要因が必ず減価につながるわけではありません。例えば築年数が経過していても適切に修繕されている建物や、歴史的価値がブランド力になり、評価が高まる不動産もあります。減価修正は対象不動産の個別性を踏まえて行う必要があるため、専門家に相談しながら確認するのが望ましいでしょう。 原価法が向いている不動産 原価法は、建物や土地の物理的な価値を確認したい不動産の評価に向いています。具体的には新築物件や築年数が浅い物件、取引事例が少ない地域の不動産、工場や病院など特殊な用途の建物などが挙げられます。 新築や築浅の建物は、再調達原価と実際の価値との乖離が比較的小さいため、原価法で評価しやすいです。また周辺に類似する売買事例が少ない地域では、取引事例比較法だけでは価格を判断しにくいため、原価法を用いることで価格を把握しやすくなります。 工場や病院、学校、倉庫などの特殊な用途の建物も、一般的な住宅やマンションと比べて類似事例を見つけにくい傾向にあります。このような不動産では、建築にかかる費用や建物の状態を基に評価できる原価法が活用されることが多いです。 原価法の注意点 原価法は費用面を基に評価する方法のため、算出された価格が必ずしも実際に市場で売買される価格と一致するとは限りません。市場での人気や需要、周辺の取引水準などは、原価法だけでは十分に反映しにくいためです。 また建物の築年数や劣化状況によって評価額が大きく変わるため、再調達原価をどのように算出するか、どの範囲まで減価修正を行うかについて、専門的な判断が求められます。 さらに建物の再調達原価が高いからといって、不動産投資の対象として優れているとは限りません。入居需要が弱かったり、家賃収入が十分に見込めなかったりする場合は、投資対象として適さない可能性があります。原価法は資産価値や担保価値を確認する上で有効ですが、投資判断を行う際は、収益還元法による収益性や、取引事例比較法による市場性も併せて確認しましょう。 目的別に適した不動産価格の算出方法 不動産価格の評価方法は、収益還元法・取引事例比較法・原価法の3つに大きく分けられます。それぞれ見ている視点が異なるため、どの方法が常に優れているというわけではありません。不動産価格を判断する際は、各算出方法のメリットや注意点を把握し、一つの方法だけに頼るのではなく、目的に応じて複数の評価方法を組み合わせることが大切です。 ここでは具体的な目的別に、どの算出方法を活用するべきか適切な組み合わせをご紹介します。 購入する投資用不動産の評価を確認する場合 購入する投資用不動産の評価を確認する場合は、収益還元法と取引事例比較法を併用するのがおすすめです。 収益還元法を用いると、表面利回りだけでは分かりにくい空室率や運営費用、修繕費、管理費なども踏まえて、実質的な収益を把握できます。ただし、収益還元法だけでは周辺相場と比べて価格が適正かどうかを判断しにくいです。そのため、取引事例比較法で周辺の類似物件がどの程度の価格で取引されているかも確認しましょう。収益性と市場価格の両面から見ることで、購入価格の妥当性を判断しやすくなります。 売却価格や購入価格の妥当性を確認する場合 売却価格や購入価格が周辺相場と比べて妥当かを確認したい場合は、取引事例比較法が参考になります。近隣や類似エリアで実際に取引された物件の成約価格を基に評価するため、市場価格として高すぎないか、または安すぎないかを判断しやすい方法です。 例えば、同じマンション内や近隣エリアで類似した成約事例がある場合、階数や方角、専有面積、築年数などを比較することで、おおよその価格感を把握できます。土地の場合も、立地や面積、接道状況などが近い事例を参考にすれば、売買価格の目安をつかみやすくなるでしょう。 なお、投資用不動産を売却する場合は、収益還元法の視点も重要です。入居率を改善したり、相場に合わせて家賃を見直したりすることで、物件の収益力が高まり、収益還元法による評価額の向上につながる場合があります。 融資評価や担保価値を確認する場合 融資評価や担保価値を確認したい場合は、価格の根拠が分かりやすい原価法の考え方が参考になります。特にフルローンを希望する場合は、物件価格に対する担保価値が十分見込めるかどうかが重要です。場合によっては頭金を用意しなければならない可能性もあるため、気になる物件と出会ったら早めに試算しておきましょう。 ただし、評価方法は物件の種類や金融機関の方針によって異なる場合があります。例えば、区分マンションでは収益還元法を重視するケースがある一方、土地建物一体の戸建てや1棟物件では、積算価格が参考にされることもあります。融資を前提に物件を検討する場合は、どのような評価方法が用いられるのかを不動産会社や金融機関に確認しておきましょう。 不動産の評価方法を理解し、納得感のある投資判断につなげよう 不動産価格を評価する方法には、主に収益還元法・取引事例比較法・原価法があります。収益還元法は不動産が生み出す収益性、取引事例比較法は市場での取引水準、原価法は土地や建物の費用性を基に価格を評価する方法です。 それぞれ見ている視点が異なるため、同じ不動産でも算出される価格が異なる場合があります。そのため、不動産投資では一つの評価方法だけで判断するのではなく、目的に応じて複数の評価方法を組み合わせることが大切です。投資用不動産を購入する際は収益還元法で収益性を確認し、取引事例比較法で周辺相場とのバランスを把握しましょう。さらに、原価法や積算価格で土地・建物の資産価値も確認すれば、多面的な視点で投資判断しやすくなります。 ただし、取引事例比較法では、周辺の成約事例の収集や条件差の比較に手間がかかります。データの数が少なかったり、比較対象の選び方に偏りがあったりすると、価格判断の精度にも影響するため注意が必要です。 エスリード株式会社では、AIがレインズのデータを自動で収集し、レポート化できる仕組みを活用しています。膨大な取引事例を基に客観性と網羅性を担保しながら、周辺相場や類似物件との比較を行えるため、不動産価格の妥当性を確認しやすい点が強みです。 「取引事例を基に物件価格の妥当性を確認したい」「収益性や将来の売却も見据えて投資用不動産を検討したい」とお考えの方は、ぜひエスリードへご相談ください。 不動産投資の基礎知識 2026.07.10 【2026年4月】マンション賃料変動率・マンション価格変動率共に大阪が世界一! 大阪の家賃や物件価格が上昇している理由を徹底解説 不動産投資を検討する際、どのエリアを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。近年、投資先として注目を集めているエリアの一つが「大阪」です。不動産サービス大手の日本不動産研究所が2026年4月に行った調査によると、大阪は世界の主要都市の中で、賃料水準と物件価格水準の上昇率で、いずれも世界一となりました。なぜ大阪は、賃料や物件価格の水準がここまで伸びているのでしょうか。 本記事では同調査の概要をはじめ、大阪の家賃や物件価格が上昇している理由を解説します。大阪で不動産投資を検討している方は、エリア選びの参考にしてみてください。 ※本記事の内容は、2026年6月時点の情報です suggest2 日本不動産研究所の調査によると、大阪はマンション賃料指数の対前回変動率で3.1%上昇、マンション価格指数の対前回変動率で3.3%上昇した 大阪の家賃や物件価格が上昇している背景には、再開発による街の魅力向上、交通網の整備、建設コストの増加などがある 大阪で不動産投資を検討する際は、再開発情報やエリアごとの賃貸需要を踏まえて、投資目的に合った物件を選ぶのが重要 大阪のマンション賃料指数は半年で3.1%上昇 一般財団法人日本不動産研究所が公表した「第26回 国際不動産価格賃料指数(2026年4月現在)」によると、2025年10月から2026年4月までの半年間で、マンション賃料指数の対前回変動率が最も高かった都市は大阪でした。 マンション賃料指数とは、各都市におけるマンション賃料の水準を数値化したものです。 大阪のマンション賃料指数は、前回調査から3.1%上昇しており、ニューヨークや東京、ロンドン、香港といった世界の主要都市を上回る結果となりました(※1)。 都市別のマンション賃料指数の対前回変動率は、以下の通りです。 都市 マンション賃料指数の対前回変動率 大阪 3.1% ムンバイ 2.8% シドニー 2.8% ニューヨーク 2.4% 東京 1.4% ロンドン 1.2% 香港 1.0% 日本不動産研究所は大阪の結果について、都心部の高層マンションに対する富裕層の需要が根強いことに加え、駅近のファミリー向けマンションへの実需も堅調であると分析しています。また競争力の高い物件を中心に、賃料上昇の傾向が見られることも、マンション賃料指数が高まった要因であると述べています。 一方、家賃の金額そのものを見ると、立地や物件の条件によって差はあるものの、東京23区のワンルームの家賃水準(2026年5月調査)は大阪市の約1.3倍となっており、依然として大きな開きがあります。しかし、世界の主要都市を上回るペースで家賃水準が上昇している現在、東京都の差は着実に縮まっています。 このマンション賃料指数の上昇率は、大阪が日本の第二の中枢都市として国内外から改めて注目を集めている表れともいえるでしょう。東京と比較してまだ割安感が残っているということは、裏を返せば、投資先としての伸びしろが大きいということです。家賃上昇による収益性の向上や資産価値の成長も期待できるため、大阪は今後さらに国内外から注目される都市として存在感を強めていくでしょう。(※2)。 ※1参考:一般財団法人日本不動産研究所.「第26回 国際不動産価格賃料指数(2026年4月現在)」.(参照:2026-06-12). ※2参考:全国賃貸管理ビジネス協会.「全国家賃動向」.(参照:2026-06-13). 大阪のマンション価格指数も半年で3.3%上昇 大阪は、マンション賃料指数だけではなくマンション価格指数も上昇傾向にあります。 同調査によると、マンション価格指数の対前回変動率が最も高かった都市も大阪でした。マンション価格指数とは、各都市におけるマンション価格の水準を数値化したものです。 大阪のマンション価格指数は、前回調査から3.3%上昇しました。次いでニューヨークが2.9%、ムンバイが2.7%となっており、ここでも有名都市をしのぐ上昇率を見せています(※)。 都市別のマンション価格指数の対前回変動率は、以下の通りです。 都市 マンション価格指数の対前回変動率 大阪 3.3% ニューヨーク 2.9% ムンバイ 2.7% シドニー 2.3% 香港 1.9% 東京 1.6% 一方、同調査によると、東京の物件価格を100とした場合、大阪は7割程度と、賃料水準同様、まだ割安に物件を取得できる状況です。年間予定賃料を物件価格で割って算出する「表面利回り」も東京より高く出やすく、将来性のみならず、投資効率の面でも大阪の方が優位な状況といえるでしょう。 また大阪では、高額物件への注目度も高まっています。例えばうめきた2期地区に建設されるタワーマンション「グラングリーン大阪 THE SOUTH RESIDENCE」は、最上階の物件が一部屋当たり40億円で完売したことが話題になりました。こうした超高額マンションの需要もあるため、大阪の不動産価格は今後も上昇傾向を維持すると考えられます。 ※参考:一般財団法人日本不動産研究所.「第26回 国際不動産価格賃料指数(2026年4月現在)」.(参照:2026-06-12). 大阪の家賃や物件価格が上昇している理由 大阪のマンション賃料指数やマンション価格指数が上昇している背景には、都市開発による街の魅力向上や交通網の整備、建設コストの増加などがあると考えられます。 特に大阪市内では、梅田・なんば・淀屋橋といった都心部に加え、夢洲や咲洲などのベイエリア、大阪城東部エリアでも複数の再開発プロジェクトが進んでいます。こうした動きによって利便性や集客力が高まると、居住地や投資先としての注目度が上がり、賃貸需要や物件価格が高まる可能性があるのです。 ここでは、大阪の家賃や物件価格が上昇している理由として考えられる、以下3つの主な要因をご紹介します。 開発による魅力向上 交通網の整備による利便性の向上 建設コストの増加 開発による魅力向上 大阪市内では、大規模な再開発プロジェクトが複数進行しています。商業施設やオフィス、都市公園、交通結節点などの整備が進むことで、街の魅力や利便性が高まり、周辺エリアの賃貸需要の増加が期待できるでしょう。 また再開発によって人の流れが変わると、これまで注目されてこなかったエリアにも住宅需要や投資需要が波及することがあります。大阪の家賃や物件価格の上昇を考える上では、こうした都市開発の動きも判断材料になるでしょう。 ここでは、大阪のキタ・ミナミ・ニシ・ヒガシエリアにおける代表的な再開発をご紹介します。 【キタ】うめきたプロジェクト 【キタ】芝田1丁目計画・梅田一丁目一番地計画 【ミナミ】ミナミエリアの再開発プロジェクト「グレーターなんば」 【ミナミ】淀屋橋ステーションワンの建設 【ニシ】日本初となる統合型リゾート(IR)の開発 【ニシ】咲洲コスモスクエア地区の開発 【ヒガシ】森之宮エリアの開発 【ヒガシ】大阪ビジネスパークエリアの再開発 【ヒガシ】京橋駅周辺の再開発 【キタ】うめきたプロジェクト 大阪・梅田エリアでは、うめきた地区の大規模再開発プロジェクトが進んでいます。うめきた地区とは、大阪市北区にあるJR大阪駅北側の梅田貨物駅跡地を中心としたエリアです。JR大阪駅や阪急大阪梅田駅、Osaka Metro梅田駅などが集まる西日本最大級のターミナルエリアに位置しており、もともと高い交通利便性を備えています。 うめきたプロジェクトの先行開発区域では、2013年に「グランフロント大阪」がまちびらきし、オフィスや商業施設、ホテル、ナレッジキャピタル(知的創造・交流施設)などが集まる梅田の新たな顔として定着しています。 2期区域では「みどり」と「イノベーション」の融合拠点を目指したまちづくり「グラングリーン大阪」の開発が進行中です。2024年9月には先行まちびらきを迎え、うめきた公園も一般開放されました。うめきた公園は、JR大阪駅直結の都市公園を中心とする複合都市開発の一部であり、大規模ターミナル駅直結の都市公園としては世界最大級の規模とされています。 またうめきた地区では都市基盤整備事業も進められています。周辺道路の整備や歩行者動線が改善すれば、交通の円滑化や回遊性向上が期待できるでしょう。こうした再開発によって大阪キタエリアのブランドイメージや利便性が高まれば、周辺の不動産価値にもプラスに働く可能性があります。 【キタ】芝田1丁目計画・梅田一丁目一番地計画 阪急大阪梅田駅周辺でも再開発が進められています。阪急阪神ホールディングスグループは、大阪梅田を世界の人々が訪れたく、働きたくなる「国際交流拠点」へと高める都市構想として「梅田ビジョン」を掲げています。 その一環として進められているのが、阪急大阪梅田駅周辺の再開発プロジェクト「芝田1丁目計画」です。阪急電鉄は、梅田ビジョンに基づく「大阪梅田駅の将来のありたい姿」を策定し、2026年1月から阪急大阪梅田駅のリニューアル工事を開始しています。 また梅田エリアでは、阪神百貨店が入る大阪神ビルディングや新阪急ビルの建て替えを柱とした再開発「梅田一丁目一番地計画」も進められています。 梅田はすでに大阪を代表するビジネス・商業エリアですが、再開発によってさらに利便性や集客力が高まれば、周辺エリアの居住ニーズにも影響を与えるでしょう。 【ミナミ】ミナミエリアの再開発プロジェクト「グレーターなんば」 ミナミエリアでは、南海電鉄を中心に「グレーターなんば」と呼ばれる再開発が進められています。グレーターなんばでは、複数のエリアで商業施設やホテルなどの整備が進んでおり、にぎわい創出の拠点や観光・宿泊拠点として注目されています。 近年は特にホテル開発が活発で、2022年に星野リゾートの「OMO7大阪」が開業しました。また2023年に誕生した「なんばパークス サウス」にはタイの高級ホテル「センタラグランドホテル大阪」や「ホテル京阪 なんばグランデ」がオープンしています。さらに難波千日前エリアでは「難波千日前地点再開発プロジェクト」の一環で「ハイアット セントリック なんば 大阪」が関西初上陸し、2031年3月の開業が予定されています。 なんばエリアは関西国際空港へのアクセスが良く、インバウンド需要の受け皿にもなりやすいです。ホテルや商業施設の整備が進むことで、観光客やビジネス利用者の流入がますます増えれば、周辺エリアの地価や賃貸需要にも好影響となることが期待されています。 【ミナミ】淀屋橋ステーションワンの建設 淀屋橋エリアでは、超高層複合ビル「淀屋橋ステーションワン」が2025年に竣工しました。淀屋橋ステーションワンは、御堂筋と土佐堀通が交差する淀屋橋交差点の南東角に位置し、中央日本土地建物が所有していた「日土地淀屋橋ビル」と、京阪ホールディングスが所有していた「京阪御堂筋ビル」を一体的に再開発したプロジェクトです。 建物は地上31階建てで、淀屋橋エリア最高となる高さ約150mの外観を持つ複合ビルです。オフィス、商業施設、レストラン、展望施設などで構成され、淀屋橋駅直結の利便性も備えています。 また御堂筋を挟んだ西側では「淀屋橋ゲートタワー」の再開発も進められており、淀屋橋交差点周辺では東西の再開発によって新たなランドマーク形成が進んでいます。 淀屋橋は、梅田・本町・中之島へのアクセスに優れたビジネスエリアです。オフィス機能や商業機能が強化されることで、周辺で働く人の居住ニーズや、利便性を重視する賃貸需要が高まっていくでしょう。 【ニシ】日本初となる統合型リゾート(IR)の開発 大阪ベイエリアでは、夢洲で統合型リゾート(IR)の開発が予定されています。大阪IRはカジノだけではなく、国際会議場や展示施設、ホテル、劇場、商業施設などを備える複合施設です。年間来訪者は約2,000万人、年間売上は約5,200億円が見込まれています(※)。また大阪IRの運営による地域経済への効果として、近畿圏での経済波及効果は年間約1兆1,400億円、雇用創出効果は年間約9.3万人と推計されています。 大阪IRが開業すれば、観光・ビジネス双方の需要が高まり、夢洲や咲洲、弁天町、九条、本町など、アクセスの良いエリアへの注目度が高まるかもしれません。来訪者や従業員の増加に伴い、宿泊・商業・住宅需要が周辺エリアに波及することも考えられるでしょう。 ※参考:大阪府・大阪市.「統合型リゾート大阪IR」.(参照:2026-06-12). 大阪IRによる経済効果や開業メリットなどについては、以下の記事も併せてご覧ください。 大阪に開業予定の統合型リゾート(IR)の経済効果はどのくらい? 他国のIRと徹底比較 【ニシ】咲洲コスモスクエア地区の開発 夢洲の隣に位置する人工島・咲洲では、コスモスクエア地区の開発も進められています。咲洲は交易拠点として位置付けられており、大阪港の中核をなすコンテナターミナルやフェリーターミナルが集まるエリアです。また国内最大級の国際展示場「インテックス大阪」や「アジア太平洋トレードセンター」もあり、国際交流やビジネスエリアとしての側面もあります。 咲洲では、2018年から「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発」が行われており、高層マンションやホテル、飲食店、スポーツ施設などが立ち並ぶ予定です。約600戸もの分譲マンションも計画されていることから、夢洲でのIR開発などをきっかけにベイエリア全体の交通利便性や知名度が高まれば、居住エリアとしての存在感も高まっていくでしょう(※)。 ※参考:大阪維新の会.「咲洲コスモスクエア地区複合一体開発事業完了」.(参照:2026-06-22). 【ヒガシ】森之宮エリアの開発 大阪城東部エリアでは、森之宮周辺の開発も進んでいます。森之宮エリアは、大阪城公園に近く、JR大阪環状線やOsaka Metro中央線、長堀鶴見緑地線を利用できる交通利便性の高いエリアです。 大阪府と大阪市が策定した「大阪城公園周辺地域まちづくり方針」の第1期開発では、大阪公立大学森之宮キャンパスの整備が進められ、2025年に開校しました。これに続く「1.5期開発事業」では、Osaka Metro用地に新駅や駅ビルの設置、大阪城公園駅と森之宮エリアを結ぶ歩行者デッキの整備などが予定されています。新駅ではオンデマンドバスやパーソナルモビリティの導入に加え、次世代交通を見据えた「空飛ぶクルマ」の離発着場の設置も計画に入っています。 森之宮エリアの開発が進めば、教育・商業・交流機能が強化され、学生や教職員、ビジネスパーソン、観光客など多様な人の交流やにぎわいが生まれるでしょう。ヒガシエリア全体の魅力向上とともに、居住地としてのニーズ向上も期待できます。 【ヒガシ】大阪ビジネスパークエリアの再開発 大阪ビジネスパーク(OBP)エリアは、大阪城公園や京橋駅に近い複合業務地区です。オフィスを中心に商業施設やホテル、ホールなどが緑豊かな空間の中に集まっており、ビジネスと観光の両面で利便性の高いエリアといえます。 先述した「大阪城公園周辺地域まちづくり方針」では、京橋駅から大阪ビジネスパーク、大阪城公園にかけての道路環境整備の推進や、寝屋川・第二寝屋川の公園空間の景観整備、安全性向上、ゆとりある歩行者空間の確保などが示されています。 OBPエリアで歩行者ネットワークや滞在空間の整備が進めば、大阪城公園や京橋駅周辺との回遊性が高まり、ビジネスだけではなく観光や居住としてのニーズも向上するかもしれません。 【ヒガシ】京橋駅周辺の再開発 京橋駅周辺は、JR・京阪電鉄・Osaka Metroが利用できる交通結節点であり「ヒガシの玄関口」とも呼ばれるエリアです。大阪駅や淀屋橋、天満橋、大阪城公園方面へのアクセスに優れており、ビジネス・観光・居住のいずれの面でも利便性が高いです。 京橋駅周辺では、JR片町線・東西線を地下化することで、鉄道や道路によって分断されていた交通接続環境の改善や歩行者ネットワークの再整備が計画されています。 また京橋駅周辺では、国際水準のスマートオフィスの整備などが進められており、スタートアップやベンチャー企業の集積を促す拠点形成が計画されています。企業誘致が進めば、京橋駅周辺は単なる乗り換え拠点ではなく、ビジネスや居住機能を備えたエリアとしての存在感を高めていくでしょう。 交通網の整備による利便性の向上 大阪では、大阪・関西万博やIR開発、都心部の再開発をきっかけに、交通網の整備も進んでいます。交通利便性が高まると、通勤・通学や観光、ビジネスでの移動がしやすくなり、沿線エリアの居住ニーズや賃貸需要の高まりにつながるでしょう。 主な交通網の整備としては、以下のようなものがあります。 路線・事業名 主な内容 開業・整備時期の目安 北大阪急行線延伸 千里中央駅から箕面萱野駅まで延伸し、箕面船場阪大前駅・箕面萱野駅を新設 新大阪・梅田・なんば方面へ乗り換えなしでアクセス可能 2024年3月開業 Osaka Metro中央線の夢洲延伸 コスモスクエア駅から夢洲駅まで延伸 大阪IRへのアクセスを担う路線 2025年1月開業 なにわ筋線 大阪駅とJR難波駅・南海新今宮駅方面を結ぶ新線 2031年春開業予定 新大阪連絡線 新大阪駅~十三駅~大阪駅を結び、新幹線駅と市内、関西国際空港方面へのアクセス向上が期待される 開業時期は未定 リニア中央新幹線 東京・名古屋・大阪を結ぶ国家的プロジェクト、大阪までの早期全線開業を目指す動きがある 大阪延伸時期は今後の進捗による 中でも注目を集めているのが、なにわ筋線です。なにわ筋線は大阪駅とJR難波駅、南海本線の新今宮駅を結ぶ新たな鉄道路線です。なにわ筋線によって鉄道ネットワークの強化や関西国際空港・新大阪駅へのアクセス改善が見込まれており、働く場所・住む場所・訪れる場所としての大阪の魅力がさらに増していくでしょう。 建設コストの増加 大阪の物件価格や家賃が上昇している背景には、建設コストの増加もあります。近年は、円安による輸入コストの増加や物価上昇などにより、建築資材の価格が上昇しています。資材費や人件費が高くなると、マンションを建設するための費用も増えるため、物件価格が上昇する要因になるでしょう。 またインバウンド需要が高い大阪市内の中心部では、ホテル需要が高まっていることも影響しています。同じ土地に建物を建てる場合、エリアによってはマンションよりもホテルの方が高い収益を見込めるケースがあります。そのため、土地の入札時にホテル開発を行う不動産デベロッパーが高い金額を提示し、土地の取得価格が上昇しやすくなるのです。 土地の価格が上がると、マンション開発を行う不動産デベロッパーも、用地を取得するために入札額を引き上げざるを得なくなります。その結果、土地取得費や建設費を含めた事業費が増え、マンションの販売価格が高くなるのです。 さらに物件価格が上がると、購入後のローン返済額や運用コストも大きくなります。投資家が一定の収益を確保するためには、家賃を高めに設定するケースも出てくるでしょう。 このように、建築資材の価格上昇やホテル需要の高まりによる土地取得競争は、大阪の物件価格や家賃が上昇する要因の一つと考えられます。もちろん、全てのエリアで同じように価格や家賃が上がるわけではありませんが、特にインバウンド需要が高い中心部では、今後も土地価格の動向を確認しておく必要があります。 大阪の不動産は今が狙い目! 大阪で不動産投資を始めるならエスリードにご相談ください! 不動産投資を始める際は物件選び以上に、どのエリアに投資するかが重要です。特に中長期的な運用を前提とする場合は、将来にわたって賃貸需要が見込めるか、家賃や物件価格の維持・上昇が期待できる要素があるかを見極める必要があります。 大阪は一般財団法人日本不動産研究所が公表した2026年4月の調査で、マンション賃料指数・マンション価格指数の対前回変動率がいずれも対象都市の中で最も高い結果となりました。東京やニューヨーク、ロンドン、香港といった世界の主要都市を上回る上昇率となっており、家賃や物件価格の上昇が期待できるエリアの一つといえるでしょう。 また不動産投資ではエリア選びだけではなく、不動産会社選びも重要です。大阪のエリア特性や賃貸需要、開発計画に詳しい不動産会社に相談することで、投資目的に合った物件を選びやすくなります。 エスリード株式会社は、大阪を中心に関西圏でマンションの開発・販売を行っている不動産デベロッパーです。大阪の不動産市場やエリア特性を踏まえた物件提案はもちろん、購入前の収支シミュレーションから運用中の管理、将来的な売却までグループ内で一貫してサポートできます。 大阪は家賃や物件価格の上昇、再開発、交通網の整備などを背景に、今後も不動産投資先として注目されるエリアです。大阪での不動産投資に興味がある方は、ぜひエスリードへご相談ください。 大阪で販売中のエスリードの物件 大阪で販売中のエスリードの投資用物件は以下の通りです。大阪で不動産投資をお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。(※2026年6月22日時点の情報です) エスリード 新大阪アヴァン エスリード 難波ALLURE エスリード 大阪城EAST エスリード ザ・グラン大阪ノース エスリード ザ・カレント大阪 不動産投資の基礎知識 2026.07.10 不動産投資の成功率は? 失敗したかもしれないと思った時に確認すべきこと 不動産投資に興味がある方の中には「どのくらいの人が成功しているのか」「自分でも利益を出せるのか」と気になっている方もいるでしょう。また、すでに物件を運用している方の中には「このまま保有し続けてよいのか」「早めに売却すべきなのか」と悩んでいる方もいるかもしれません。 不動産投資の成功率を一律に示す明確なデータはなく、成功・失敗の判断基準は投資目的によって異なります。そのため一面的な数字だけを見て、すぐに失敗と決めつけるのは早計です。 本記事では、不動産投資の成功率に対する考え方や、運用中に「失敗したかもしれない」と感じた時に確認すべきことを解説します。売却前に検討したい対策や、不動産投資を成功させるためのポイントもご紹介するので、不動産投資に不安がある方はぜひ参考にしてください。 suggest2 投資目的が明確であれば、月々のキャッシュフローやローン残債、将来の売却価格などを踏まえて不動産投資の成否を判断しやすくなる 不動産投資に失敗したかもしれないと感じた場合は、売却前に当初シミュレーションとの乖離や、売却価格とローン残債の差を確認することが大切 不動産投資を成功させるには、需要が減少しにくいエリアの物件を選び、信頼できる不動産会社や管理会社に相談しながら、現実的なシミュレーションを行う必要がある 不動産投資の成功率は? インターネット上の情報には、不動産投資の成功率として具体的な割合が紹介されていることがあります。しかし、不動産投資の成功率を一律に示す公的なデータや、明確な根拠のある統計は存在しません。 そもそも不動産投資における成功は、人によって定義が異なるため、一律に数値化できないものです。そのため、ご自身の運用状況を成功例や失敗例に当てはめて単純に判断するのではなく、以下のポイントに沿って確認することが大切です。 不動産投資の成功・失敗は目的によって異なる 不動産投資に限らず、成功・失敗は「投資を始めた目的を達成できたかどうか」で判断する必要があります。 例えば老後資金の確保を目的に不動産投資を始めた場合、必ずしも高値で売却できることが成功ではありません。物件を長期的に保有し、定年後も継続的に家賃収入を得られる状態を作れていれば、目的を達成できているといえるでしょう。 一方、節税を目的に不動産投資を始めた場合は、家賃収入による利益が大きくなくても、不動産所得の赤字を給与所得などと相殺(損益通算)し、所得税や住民税の負担を軽減できていれば、目的に沿った成果が出ていると考えられます。所得税率の区分が1段階下がるほど課税所得を圧縮できれば、節税面では一定の効果があったといえるでしょう。 またフルローンで新築ワンルームマンション投資を始めた場合、借入額が大きくなるため、長期のローンを組んだとしても月々の返済額は大きくなりやすいです。その結果、月々のキャッシュフローがマイナスになるケースもあります。 しかし、月々のキャッシュフローがマイナスであることが、すぐに失敗を意味するわけではありません。頭金として先にまとまった資金を入れるのか、月々の支出として分割して負担するのかの違いであり、長期的な資産形成や将来の家賃収入、売却時の手残りまで含めて成否を判断する必要があります。 不動産投資で失敗しないためには安易に売却しないこと 不動産投資を始めた後に失敗につながりやすい判断の一つが、売るべきではない物件を早い段階で売却してしまうことです。 金融機関からの融資を活用した不動産投資では、家賃収入を得ながらローン返済を進め、一定期間後に、売却価格がローン残債や諸経費などの合計を上回るタイミング(損益分岐点)を迎えるのが一般的です。そのため損益分岐点を迎える前に売却をしてしまうと、本来であれば回収できたはずの利益を逃し、かえって損失が出てしまうことがあります。 また中古物件の買取再販業者の中には「今すぐ売らないと損をする」「早く手放した方がよい」などと不安をあおるような案内をする事業者もいます。しかし、特に都心部の好立地物件であれば、インフレによる物件価格や家賃の上昇が期待できる場合もあり、必ずしも早期売却が最善とは限りません。 不動産投資に失敗したかもしれないと感じた場合でも、すぐに売却を決断するのではなく、ローン残債や家賃の下落状況、ローン返済の進み具合などを確認し、冷静に判断することが重要です。加えて、急にまとまった資金が必要になり、物件を売却せざるを得ない状況を避けるためにも、日頃から生活費を含めたキャッシュフローに余裕を持たせておきましょう。 なお、ワンルームマンション投資で失敗が起こるからくりについては、以下の記事でも解説しています。併せてチェックしてみてください。 ワンルームマンション投資で失敗するからくりとは? 悪徳業者の手口や後悔しないためのポイントを解説 不動産投資に失敗したかもしれないと思った時に確認すべきこと 不動産投資を始めた後に、空室が続いたり、月々のキャッシュフローが想定より悪かったりすると「失敗したかもしれない」と感じるかもしれません。 焦って売却などの決断をするのではなく、まずは以下の点をチェックし、現状を正しく把握しましょう。 投資目的や当初シミュレーションに対する進捗 現在の売却価格とローン残債の比較 家賃の下落スピードとローン残債の減少スピードの比較 それぞれ詳しく解説します。 投資目的や当初シミュレーションに対する進捗 まずは、不動産投資を始めた目的を再確認しましょう。不動産投資の成功・失敗は、目先の収支だけで決まるものではなく、当初の目的に対してどの程度進捗しているかで判断するのが望ましいです。 例えば老後の家賃収入を目的に始めたのであれば、短期的に月々のキャッシュフローが大きくプラスになっていなくても、ローン返済が進み、将来の収入源を安定して作れるかどうかが重要です。一方節税を重視している場合は、不動産所得の赤字を給与所得などと損益通算できているか、税負担の軽減につながっているかを確認する必要があります。 進捗を確認できたら、これまでの運用実績と現在の状況を踏まえて、今後のシミュレーションを再度行いましょう。当初のシミュレーションと比較して、どの程度の乖離があるのかを確認することで、現状を客観的に把握しやすくなります。 乖離がある場合は、その要因を突き止めることも重要です。想定より空室率が高いのか、家賃の下落スピードが早いのか、金利上昇によってローン返済の負担が重くなっているのかによって、取るべき対応は変わります。 ただし、長期運用を前提としている場合、損益分岐点が数年程度ずれたからといって、すぐに失敗と判断する必要はありません。当初の目的に対して大きく外れていないか、今後の改善余地があるかを長い目で見て判断するのが良いでしょう。 現在の売却価格とローン残債の比較 次に、現在の売却価格とローン残債を比較しましょう。売却価格からローン残債を差し引くことで、現時点で売却した場合にどの程度の手残りがあるのか、または自己資金の持ち出しが必要になるのかを把握できます。 例えば現在の売却価格がローン残債を上回っていれば、売却によってローンを完済したとしても手元に資金が残る可能性があります。一方、売却価格がローン残債を下回っている場合は、売却してもローンを完済できず、自己資金で不足分を補う必要が出てくるでしょう。 現在の売却価格を知りたい場合は、不動産会社に売却査定を依頼すれば、実際の市場価格に近い目安を把握できます。ただし、査定後に営業連絡を受ける可能性がある点には注意が必要です。 営業連絡を避けたい場合や、大まかな目安を知りたい場合は、現在の家賃と還元利回りを基に、収益還元法で物件価格を試算する方法もあります。収益還元法は、物件が生み出す収益を基に物件価値を算出する方法です。 収益還元法については、以下の記事で詳しく解説しています。 不動産価格の評価方法とは? 収益還元法・取引事例比較法・原価法の違いを解説 家賃の下落スピードとローン残債の減少スピードの比較 不動産投資では、築年数の経過に伴って家賃が下落するのが一般的です。そのため収益還元法で物件価格を算出すると、家賃の下落に併せて物件の価格も下がるでしょう。 しかし家賃や物件価格が下がるからといって、必ずしも資産形成が進んでいないとは限りません。確認すべきなのは、家賃の下落スピードに対して、ローン残債の減少スピードの方が上回っているかどうかです。 家賃7万円・物件価格2,000万円の物件を、金利2%・返済期間35年のフルローンで購入した場合の家賃の下落スピードとローン残債の減少スピードを比較してみましょう。家賃は、1〜10年目は変動なし、11〜15年目は5%下落すると仮定しています。 経過年数 月々の家賃 家賃水準 元本返済額の累計 ローン残債 ローン残債水準 購入時 7万円 100% – 2,000万円 100% 5年目 7万円 100% 約208万円 約1,792万円 約89.6% 10年目 7万円 100% 約437万円 約1,563万円 約78.2% 11年目 6.65万円 95% 約486万円 約1,514万円 約75.7% 15年目 6.65万円 95% 約690万円 約1,310万円 約65.5% この例では、11年目に家賃が5%下落して月6万6,500円になったとしても、ローン残債は約1,514万円まで減少しています。家賃水準は当初比95%にとどまる一方、ローン残債は75.7%まで下がっているため、家賃下落よりもローン残債の減少の方が大きく進んでいることが分かるでしょう。 元利均等返済では、返済が進むにつれて元金の返済割合が大きくなるため、ローン残債の減少スピードは徐々に速くなります。そのため家賃の下落周期が想定よりもよほど短くなってしまったり、家賃の下落率が想定よりも極端に高まってしまったりしなければ、ローン残債の減少の方が早く進み、順調に資産形成が進んでいきます。 たとえ家賃が下落している場合でも、すぐに「失敗した」と判断するのではなく、10年後・15年後のローン残債を踏まえて判断することが大切です。また想定売却価格を設定し、いくらでどのタイミングに売れればローン残債や諸費用を上回るのかを確認するのもよいでしょう。 ただし、サブリースや家賃保証制度を利用しているかどうかによっても、売却時に残る実質的な利益は変わります。空室時にローン返済を自己資金から行う場合、返済予定表ではローン返済が進んでいても、運用期間中の手出し分によって実質的な売却益は目減りしてしまうからです。 ローン残債と物件価格の単純な比較だけではなく、運用中の支出なども含めて現状を把握しましょう。 不動産投資に失敗したかもしれないと思った時に検討すべきこと 現状を把握した上で不動産投資に失敗したかもしれないと感じた場合でも、すぐに売却を決断する必要はありません。空室が続いている、家賃が想定よりも下がっているといった場合でも、運用方法を見直すことで改善できる可能性があります。 ここでは、売却前に検討したい対策を3つご紹介します。 管理会社を変更する 賃貸仲介会社に広告費を支払って優先的に紹介してもらう ローンの借り換えを検討する 管理会社を変更する 空室が数カ月以上続いている、家賃収入の3~10%よりも管理手数料が高い、問い合わせやトラブルへの対応が遅いといった場合は、管理会社を見直すのも方法の一つです。業者を変えることで空室率や入居者の満足度、修繕費の発生状況が変わることがあります。 ただし、管理手数料が安いという理由だけで安易に乗り換えるのはおすすめできません。手数料が安くても、管理業務の範囲が限定されていたり、対応ごとに追加費用が発生したりする可能性があるためです。費用をすぐに捻出できなければ対応が遅れてしまい、かえって空室が長期化してしまうリスクもゼロではありません。 管理会社を選ぶ際は、手数料だけではなく、管理物件の入居率や管理業務の範囲、トラブル対応の早さ、修繕や原状回復の提案力などを踏まえて判断しましょう。 賃貸仲介会社に広告費を支払って優先的に紹介してもらう 空室期間が想定より長引いている場合は、賃貸仲介会社に広告費を支払って、物件を優先的に紹介してもらう方法もあります。 賃貸募集では、オーナーが賃貸仲介会社に広告費(AD)を支払うことで、仲介会社に積極的に物件を紹介してもらいやすくなる場合があります。広告費を支払う分、一時的な支出が発生するのは避けられません。しかし早期に入居者が決まれば、結果的に空室による損失を抑えられる可能性があります。 ただし、広告費を支払えば必ず入居者が決まるわけではない点に注意が必要です。家賃設定が相場より高い、室内設備が競合物件に比べて見劣りする、募集写真や掲載情報が不十分といった場合は、広告費をかけても効果が限定的になる可能性があります。 広告費を活用する際は、家賃設定や募集条件、物件情報の見せ方なども併せて見直しましょう。 ローンの借り換えを検討する 現在利用している不動産投資ローンの金利が高い場合は、ローンの借り換えを検討するのも一つの方法です。借り換えによって金利が下がれば、毎月の返済額や総返済額を抑えられる可能性があります。キャッシュフローに余裕が生まれれば、空室や修繕費が発生した場合の資金余力も確保しやすくなるでしょう。 ただし、ローンの借り換えには諸費用がかかります。事務手数料や保証料、抵当権の抹消・設定登記費用、司法書士報酬などが発生する場合があるため、金利が下がるからといって必ず得になるとは限りません。 借り換えを検討する際は「現在のローンをそのまま返済した場合の総支払額」と「借り換え後の返済総額に諸費用を加えた金額」を比較しましょう。金利差だけで判断せず、借り換えにかかる費用や残りの返済期間、今後のキャッシュフローへの影響まで含めて確認する必要があります。 不動産投資を成功させるために押さえておきたいポイント これから不動産投資を始める方で「失敗したくない」「成功率を上げたい」と考えているなら、以下の6つのポイントを押さえて準備を進めましょう。 将来にわたって需要が減少しにくいエリアの物件を選ぶ 信頼できる不動産会社に依頼する 金融機関の選択肢が多い不動産会社に依頼する 実績のある不動産管理会社や賃貸仲介会社に依頼する 事前に現実的なシミュレーションを行う キャッシュフローに余裕を持たせる 一つずつ詳しく解説します。 将来にわたって需要が減少しにくいエリアの物件を選ぶ 不動産投資では、立地選びが非常に重要です。賃貸需要が高いエリアにある物件は、入居希望者を確保しやすく、空室リスクや家賃下落リスクを抑えやすい傾向にあります。 例えば駅から近い、都心部へのアクセスが良い、周辺に商業施設や生活利便施設がそろっているといったエリアは、賃貸需要を見込みやすいです。また再開発や新駅・商業施設の開業などによって周辺エリアの利便性が高まれば、将来的に需要が増えることもあるでしょう。 人口動態や交通利便性、賃貸需要の動向、周辺の開発計画などを踏まえて、長期的に入居者を確保しやすい物件を選びましょう。 信頼できる不動産会社に依頼する 不動産投資の成果は、不動産会社選びによっても変わります。一口に不動産会社といっても、物件選定や収支シミュレーション、購入後のサポート体制などに差があるため、運用成果にも影響が出てしまうのです。 信頼できる不動産会社を選ぶ際は、需要の高い立地で物件を開発・販売しているかを確認しましょう。入居需要が見込めるエリアの物件を扱っている会社であれば、長期的な運用を前提にした提案を受けられる可能性が高まります。 また、宅地建物取引業者の免許番号も確認しておきたいポイントです。免許番号の括弧内の数字は更新回数を示しており、数字が大きいほど長く事業を継続している目安になります。もちろん、免許番号だけで良し悪しを判断できるわけではありませんが、会社の実績を確認する材料の一つになるでしょう。 加えて堅実な収支シミュレーションを提示してくれるか、リスクについても説明してくれるか、営業担当者の対応が誠実かもチェックしておきたいポイントです。良い面だけではなく、空室リスクや家賃下落リスク、修繕費の負担、金利上昇リスクなども含めて説明してくれる会社を選びましょう。 金融機関の選択肢が多い不動産会社に依頼する 不動産投資では、条件の良い融資を利用できるかどうかも、投資目的の達成度に影響します。金利や返済期間、借り入れ可能額などの条件によって、月々のキャッシュフローや総返済額が変わるためです。 不動産会社によって提携している金融機関の数は異なるため、選択肢が多い会社に依頼できれば、複数の融資条件の中からご自身の投資目的に合ったローンを選べます。 特に大手の不動産会社は、大手金融機関と提携しているケースもあり、提携先が多い傾向にあります。たとえ、一つの金融機関で希望通りの融資が受けられなかったとしても、別の金融機関に相談できる可能性があるでしょう。 また良い融資条件を引き出すには、オーナー側の準備も必要です。安定した収入を維持する、他の借り入れをできるだけ減らす、信用情報に傷が付かないようにするなど、金融機関から見た属性を整えておくことも意識しましょう。 実績のある管理会社や賃貸仲介会社に依頼する 不動産投資では、購入後の管理や入居者募集も成果に大きく関わります。物件自体の条件が良くても、管理体制や募集力が不十分であれば、空室期間が長引いたり、入居者対応の遅れによって退去につながったりする可能性があります。 管理会社や賃貸仲介会社を選ぶ際は、以下のポイントを必ず確認しましょう。 管理物件の入居率が高いか 管理実績が豊富か 管理手数料が妥当か 依頼したい業務に対応しているか トラブル発生時に柔軟に対応してくれるか 担当者の説明が丁寧か 入居者対応や建物の維持管理に強い会社へ依頼できれば、入居者が快適に暮らしやすい環境を保ちやすく、退去リスクの軽減にもつながります。 また不動産会社と同じグループの管理会社や賃貸仲介会社があれば、その会社を選ぶのもおすすめです。グループ内で購入後の管理や入居者募集まで一貫して相談できるため、物件情報の共有や管理対応をスムーズに進めやすくなります。同じグループの物件なので、丁寧に対応してくれたり、入居者の募集を優先的に進めてもらえたりすることもあるでしょう。 事前に現実的なシミュレーションを行う 不動産投資を成功させるには、現実的な収支シミュレーションを行うことも欠かせません。家賃収入やローン返済額だけではなく、空室率や家賃下落、修繕費・管理費・税金といった諸経費なども含めて確認することで、実態に即した収支を確認できるためです。 シミュレーションは、楽観的な条件ではなく、やや厳しめの条件で行うのがおすすめです。例えば空室率は新築で約3%、中古で5〜10%程度を見込む、家賃下落は6〜10年に一度程度発生する前提で見る、家賃の下落率を5%・10%など複数パターンで試算するといった方法があります。 先述した通り、ローン返済については、毎月の返済額だけではなく、元金がどのように減っていくかも確認しておきましょう。購入直後はローン残債が大きいため、短期的に売却すると損失が出る可能性があります。返済計画表を確認し、10年後・15年後のローン残債と想定売却価格を比較しておくことが重要です。 不動産投資のシミュレーションについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 不動産投資で欠かせないシミュレーションの考え方|必要な情報や注意すべきポイントを解説【無料DLシート付】 キャッシュフローに余裕を持たせる 長期的に安定した不動産投資を行うには、キャッシュフローに余裕を持たせることも重要です。物件やローンの組み方によっては、家賃収入よりもローン返済や管理費などの支出が上回り、毎月のキャッシュフローがマイナスになるケースも少なくありません。毎月の手出しを抑えたいなら、頭金を入れて借入額を減らすことも検討してみましょう。 また生活費を含めた資金計画に余裕がないまま投資を始めると、空室や修繕費が発生した際に、将来使う予定のある資金を取り崩さなければならない可能性があります。また急にまとまった資金が必要になったタイミングで物件を売却しようとしても、希望する価格ですぐに売れるとは限りません。 損益分岐点を迎える前に売却してしまうと、本来であれば長期保有によって得られたはずの利益を逃してしまうこともあるでしょう。そのため生活防衛費を確保した上で、不測の支出にも対応できる資金余力を持っておくことが大切です。 頭金を支払って月々の返済額を抑えるのか、フルローンを利用して手元資金を残すのかのどちらが適しているのかは、投資目的や収入状況、リスク許容度によって異なります。どちらが正解というものではないため、生活費や将来の支出も含めて、無理のない資金計画を立てましょう。 目先の収支で不動産投資の成功・失敗を判断するのは厳禁! 売却の前に現状を正しく把握しましょう 不動産投資の成功・失敗は、一律の数字で判断できるものではありません。老後の家賃収入を目的にするのか、節税対策として始めるのかなどによって、成功・失敗の基準は変わります。 そのため月々のキャッシュフローがマイナスになっている、家賃が想定より下がっている、空室期間が長引いているといった理由だけで、すぐに失敗と判断するのは避けましょう。長期で保有すれば損益分岐点を迎えられる物件でも、早い段階で売却してしまうと損失が確定してしまう可能性があります。 これから不動産投資を始める方は、将来にわたって需要が見込める立地の物件を選び、現実的な収支シミュレーションを行うことが重要です。また購入後の管理や入居者募集、将来的な売却まで相談できる不動産会社を選ぶことで、運用中の不安を軽減しやすくなります。 エスリード株式会社は、大阪を中心に関西圏でマンションの開発・販売を行っている不動産デベロッパーです。駅近や都心アクセスの良い立地を中心に物件を展開しており、購入前の収支シミュレーションから運用中の管理、入居者募集、将来的な売却までグループ内で一貫してサポートできます。 「不動産投資で失敗したかも」とお悩みの方や、長期的な資産形成を見据えて物件を選びたい方は、ぜひエスリードへご相談ください。