不動産投資を始める際、減価償却という言葉を目にするものの「どのような仕組みなのか」「どの資産が対象になるのか」と疑問に感じる方もいるでしょう。減価償却とは、建物や設備など、年数の経過とともに価値が下がる資産の取得費を、複数年に分けて経費計上する仕組みです。
不動産投資では、減価償却費を正しく計上することで不動産所得を圧縮できますが、長期的な運用で注意すべき点も少なくありません。
本記事では、不動産投資における減価償却の仕組みや対象資産、計算方法、メリットや注意点を分かりやすく解説します。
この記事で分かること
減価償却とは、事業のために使用する資産のうち、年数の経過によって価値が下がる資産について、購入費用を複数年に分けて経費計上する仕組みのことです。
不動産投資で購入した建物や設備などは、年数の経過とともに劣化し、資産価値が少しずつ下がっていきます。そのため購入費用をその年に一括で経費にするのではなく、法律で定められた耐用年数(法定耐用年数)に応じて、価値の減少分を毎年少しずつ経費として計上します。このとき経費として計上する金額が「減価償却費」です。
減価償却費は、実際にその年に現金を支払っていなくても経費として計上できる点が特長です。経費として計上できれば、家賃収入から差し引く金額が増えるため、課税対象となる不動産所得を抑えられる可能性があります。そのため、不動産投資の収支や税金を考える上で重要な仕組みといえます。
先述した通り、減価償却は事業用の資産のうち、年数の経過によって価値が下がる資産をルールに基づいて経費計上する仕組みです。そのため、不動産投資で購入した資産の全てが減価償却の対象になるわけではありません。
対象資産の区分を誤ると、申告内容の不備につながる恐れがあるため、基本的な考え方を押さえておきましょう。
不動産投資で減価償却の対象になるのは、主に建物本体や建物附属設備です。これらは賃貸業を営む上で必要な資産かつ、年数の経過とともに劣化し価値が下がっていくものなので、法定耐用年数に応じて減価償却費を計上できます。
建物附属設備とは、電気設備や給排水設備、エアコンや給湯器などの冷暖房・ボイラー設備、エアカーテン、ドアの自動開閉設備などのことです。
一方、土地は減価償却の対象になりません。土地は建物や設備のように、時間の経過によって物理的に劣化する資産ではないためです。不動産投資では、土地と建物を一体で購入するケースが多くあります。土地の価格まで減価償却の対象に含めてしまうと、税務処理の誤りにつながるため注意が必要です。
また業務上で使用していない固定資産も、減価償却の対象にはなりません。例えば賃貸に出しておらずオーナー自身が居住している部屋や、事業に使っていない設備などは、不動産所得を得るために使用している資産とはいえないためです。
さらに時間が経っても劣化しない借地権などの固定資産も、減価償却の対象外です。土地・建物・設備を正しく区分し、減価償却できる部分とできない部分を整理しておきましょう。

物件の購入価格には、減価償却できる建物・建物附属設備と、減価償却できない土地の両方が含まれています。新築物件では、土地価格・建物価格・設備価格などの内訳が売買契約書に明記されていることが多いです。一方中古物件など、物件購入時に資産ごとの価格が分からない場合、以下のような流れに沿って原価償却費を計算する必要があります。
それぞれ詳しく解説します。
物件価格の内訳が分からない場合は、以下のような方法で土地部分と建物部分の費用を算出しましょう。
また建物本体と建物附属設備を分ける場合は、設備ごとに型番などから評価額を査定する必要があります。合理的な根拠がない場合、設備割合は0として計算したり、建物と設備の割合を8:2程度の目安で考えたりすることもあります。
ただし、これはあくまでも目安です。建物構造や設備内容によって判断は分かれるため、売主や不動産会社、税理士などにも確認しながら、整理しておきましょう。
建物や設備の価格を把握したら、次に法定耐用年数と償却率を確認します。建物の場合は、構造や用途によって法定耐用年数と償却率が異なります。法定耐用年数と償却率の目安は、以下の通りです。
また建物附属設備は、設備の種類によって法定耐用年数が異なります。一部を除き基本的には15年以下のものが多いため、建物本体よりも短い期間で償却されます。
実際に計算する際は、国税庁が公表している耐用年数表や償却率表を確認し、対象資産に合った年数と償却率で計算しましょう。
※参考:国税庁.「主な減価償却資産の耐用年数表」.(参照:2026-06-05).
※参考:国税庁.「減価償却資産の償却率等表」.(参照:2026-06-05).
新築物件の減価償却費は、原則として定額法で計算します。定額法とは、取得金額を耐用年数にわたって均等に配分し、毎年一定額を減価償却費として計上する方法です。以前は定率法という計算方法もありましたが、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備および構築物については、定額法に一本化されています。
新築物件の減価償却費は、以下の式で計算します。
例えば住宅用の鉄筋コンクリート造の新築物件を、建物価格3,000万円で購入した場合、計算式は以下の通りです。
この例では、毎年66万円を減価償却費として計上できます。
中古物件の場合は、築年数に応じて残りの耐用年数を見積もり、その年数に対応する償却率を用いて減価償却費を計算します。実際には使用可能期間を正確に見積もることが難しいため、簡便法によって耐用年数を算出するケースが一般的です。
簡便法では、法定耐用年数の一部を経過しているか、全てを経過しているかによって計算方法が異なります。
例えば、住宅用の鉄筋コンクリート造、築10年の中古物件を、建物価格3,000万円で購入した場合、で考えてみましょう。
耐用年数39年の定額法償却率は0.026のため、減価償却費は以下のように計算できます。
この例では、毎年78万円を減価償却費として計上できます。実際に申告する際は、契約書や取得資料を確認し、必要に応じて税理士などの専門家に相談しましょう。
不動産投資における減価償却は、ルールを正しく理解して申告することで、税負担の軽減につながる可能性があります。ここでは2つのメリットについて、解説します。
減価償却費を経費計上することで、不動産所得を圧縮できる点は大きなメリットです。
不動産所得は、家賃収入などの総収入金額から、管理費や修繕費、ローンの利息、減価償却費などの必要経費を差し引いて計算します。経費として計上できる金額が増えれば、その分だけ課税対象となる不動産所得を抑えられます。
繰り返しになりますが、減価償却費の特長は、実際にその年に現金を支払っていなくても会計上は経費として計上できる点です。建物や設備の購入費用は取得時に支払いますが、その費用を耐用年数に応じて毎年少しずつ経費化します。そのため、現金支出を伴わない経費として、不動産所得の圧縮に役立ちます。
不動産所得が抑えられれば、結果として所得税や住民税の負担を軽減できるでしょう。
減価償却費を計上した結果、不動産所得が赤字になった場合は、給与所得など他の所得と損益通算できることがあります。
損益通算とは、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得などで生じた損失を、他の所得の黒字から差し引ける仕組みです。不動産所得の赤字を給与所得などと損益通算できれば、課税対象となる所得金額が少なくなり、所得税や住民税の負担が軽減される可能性があります。特に給与所得が高い方は不動産所得の赤字を損益通算できた場合、税負担の軽減効果を実感しやすいケースがあります。確定申告を行うことで源泉徴収された税金の一部が還付されることもあるでしょう。
ただし、不動産所得の赤字であれば必ず全額を損益通算できるわけではありません。土地取得にかかる借入金の利子など、損益通算の対象から除かれるものもあります。また節税効果だけを目的に赤字を大きくしようとすると、実際の収支が悪化し、長期的な運用に支障が出る恐れがあります。
損益通算は税負担の軽減につながる場合がありますが、あくまで不動産投資の一側面です。不動産投資を始める際は、月々のキャッシュフローや将来の修繕費、売却時の税負担なども含めて、無理のない計画になっているかを総合的に判断しましょう。

不動産投資における減価償却は、不動産所得を圧縮できるなどのメリットがある一方で、いくつか注意すべき点もあります。特に理解しておきたい注意点は、以下の4つです。
減価償却費は、法定耐用年数に応じて一定期間にわたり経費計上する仕組みです。そのため償却期間が終わると、それ以降は該当する資産について減価償却費を計上できなくなります。
新築物件であれば、比較的長く減価償却によるメリットを受けられますが、中古物件の場合は、購入時点ですでに築年数が経過しているため、簡便法で算出した耐用年数が短くなることがあります。耐用年数が短く算出される物件では、購入後しばらくは減価償却費を多く計上できる一方、借入条件によってはローン返済中に償却期間が終わる可能性がある点にも注意が必要です。
減価償却費が減少すると、不動産所得を圧縮する効果も小さくなります。家賃収入やローン返済額が大きく変わらない場合、帳簿上の所得が増え、税負担が増加する可能性があります。そのため、購入時点で「何年目まで、どの程度の減価償却費を計上できるのか」を確認し、資金計画に反映しておきましょう。
減価償却を考える上では、デッドクロスにも注意が必要です。デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を指します。
先述した通り、減価償却費は定額法で計算するため、法定耐用年数の期間中は、基本的に毎年一定額を減価償却費として計上します。一方、元利均等返済での借り入れは、毎月の返済額は一定でも、返済が進むにつれて元金部分の割合が増えていく仕組みです。そのため一定期間が経過して元金返済額が減価償却費を上回ると、デッドクロスの状態になります。また元金部分の割合が増えるということは、経費として計上できるローンの利息部分が減っていくことも意味します。
このように、ローン返済による現金支出は一定で続いているにもかかわらず、減価償却費やローン利息として経費計上できる金額は相対的に減っていく現象が起こるのです。帳簿上の不動産所得が増えれば、税負担が重くなり、会計上は黒字でも手元資金が不足する恐れがあります。
特に木造物件や中古物件など償却期間が短い物件では、ローン返済中に償却が終わり、経費計上額が大きく減る場合があります。購入前に、減価償却費の推移だけではなく、ローン返済額や税負担、手元に残るキャッシュフローまでシミュレーションしておきましょう。
減価償却は運用中の所得だけではなく、売却時の税負担にも影響します。不動産を売却する際の譲渡所得は、原則として「売却金額 − 建物の取得費 − 譲渡諸費用」で計算します。ここで注意したいのが、建物の取得費です。
建物の取得費は、購入代金や建築代金などから、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。つまり運用中に減価償却費を多く計上するほど、売却時に算入できる建物の取得費は小さくなり、譲渡所得額が大きくなる可能性があるのです。
また譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合、税率の高い短期譲渡所得に該当するため、譲渡所得税の負担が大きくなることで、想定したよりも売却益の手残りが減ってしまう可能性もあります。運用中に軽減できた所得税・住民税の税率と、売却時にかかる譲渡所得の税率との差によっては、節税効果が限定的になるケースもあるでしょう。
そのため減価償却は単に税金を減らせる仕組みではなく、税負担を将来に繰り延べている側面もあると理解しておく必要があります。不動産投資を検討する際は、運用中の節税効果だけではなく、将来売却する際の税負担も含めてシミュレーションしておくことが大切です。
減価償却費の計算や申告内容に誤りがあると、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
よくあるミスとしては、土地部分の費用を減価償却費に含めてしまうケースや、建物本体と建物附属設備の耐用年数を誤るケース、実態とかけ離れた建物価格や設備価格を設定してしまうケースなどです。
また節税効果を高める目的で建物価格を不自然に高く設定したり、必要のない経費を計上したりすると、税務署から指摘を受ける恐れがあります。修正申告が必要になれば、追加の税金や延滞税などが発生する可能性もあるでしょう。
結果的に税負担が増えたり、申告内容の不備でトラブルになったりしないよう、契約書や固定資産税評価額、設備の内訳などの資料を整理し、必要に応じて税理士などの専門家に相談してください。
減価償却とは建物や設備など、時間の経過とともに価値が下がる資産の取得費を、複数年に分けて経費計上する仕組みです。不動産投資では、建物部分や建物附属設備が減価償却の対象になりますが、土地は対象外です。そのため、物件購入時には土地・建物・設備の金額を適切に区分する必要があります。
減価償却費を適切に経費計上できれば、不動産所得を圧縮し、所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があります。一方で、減価償却期間の終了やデッドクロス、売却時の譲渡所得税への影響などには注意が必要です。節税効果だけで判断するのではなく、実際のキャッシュフローやローン返済、将来の売却まで含めて収支を確認しましょう。
エスリード株式会社は、関西エリアを中心に新築分譲マンションの開発・販売を手がけてきた不動産デベロッパーです。グループ会社全体で、物件選定から購入後の賃貸管理、売却までトータルでサポートできる体制を整えています。関西圏で不動産投資を検討している方や減価償却などの節税メリットを長期的に活用したい方は、ぜひエスリードへご相談ください。
田端 俊之
エスリード株式会社
営業部営業戦略室 次長
1999年 日本エスリードに入社、営業部門、開発部門を経て2002年から企画・マーケティング部門に従事。 携わったマンションの販売企画は100物件を超え、CM制作や自社主催のセミナー講師も務める。
マーケティング室の統括責任者として長年市場分析やマーケティング戦略業務に従事してきた経験を活かし、デベロッパーの市場分析目線から《マンション経営》をわかりやすくお伝えします。
関西の国立大学で経済学・マーケティングを学び、1999年に日本エスリードに入社。
入社以来、企画及びマーケティングを担当し、マーケティング室の統括責任者として市場分析やマーケティング戦略業務を担う。
不動産投資は誰に相談する? 目的別の相談先や相談前に準備することを解説
不動産投資について情報収集しようと思っても、インターネット上にはさまざまな意見があふれており「物件選びやローン、税金について誰に聞けばよいのか」と迷っている方もいるでしょう。不動産投資には、物件選定や収支計画、ローン、税金、相続、購入後の管理など、さまざまな判断が関わるため、相談内容に適した相手を選ぶことが大切です。 本記事では、不動産投資の主な相談先を目的別に紹介します。専門家に相談するメリットや、不動産会社に相談する際の確認ポイント、相談前に準備しておきたいことも解説するので、不動産投資について誰に相談すべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。 suggest2 不動産投資の物件選定やシミュレーション、将来の出口戦略などは不動産会社や不動産投資会社に相談するのがおすすめ 専門家に相談することで、自分では気付きにくいリスクを把握できたり、目的に合った投資判断がしやすくなる 相談先の不動産会社を選ぶ際は、目的に合った提案・リスク説明・堅実なシミュレーションの有無や、購入後のサポート体制を確認することが大切 【目的別】不動産投資の主な相談先 不動産投資に関する悩みは、相談内容によって適した相談先が異なります。まずは「何を相談したいのか」を整理することが大切です。 table2 相談したい内容 不動産投資にまつわる主な悩み 相談先 物件選びや収支計画 どの物件を選べばよいか 収支は成り立つか 賃貸需要はあるか シミュレーションをしたい など 不動産会社 不動産投資会社 税金や確定申告 減価償却費を算出したい 経費計上できる項目を知りたい 確定申告の資料を作成してほしい 相続税について知りたい など 税理士 家計やライフプランへの影響 家族構成に対して備えておくべき死亡保障額を知りたい 病気やケガをした際の公的保障を知りたい など ファイナンシャルプランナー(FP) ローンや融資 借入可能額を知りたい 現在の金利はいくらか 返済期間によって月々の返済額がどう変わるのか知りたい 団体信用生命保険とは など 金融機関 相続や法的トラブル 相続登記したい 遺産分割でもめている 賃貸借トラブル・契約トラブルなどを解決したい など 弁護士・司法書士 ※交渉や訴訟対応が必要な場合は、原則として弁護士への相談が必要 ここからは、それぞれの相談先の特長を詳しく見ていきましょう。 物件選びや収支計画を相談したい場合:不動産会社・不動産投資会社 物件選びや収支計画について相談したい場合は、不動産会社や不動産投資会社が主な相談先になります。 不動産投資では、購入する物件の立地や価格、想定家賃、管理費、修繕費、ローン返済額などを踏まえて、長期的に収支が成り立つかを確認する必要があります。不動産会社や不動産投資会社であれば、物件の提案はもちろん、賃貸需要や賃料相場、収支シミュレーションについても相談することが可能です。 会社によって対応範囲は異なり、物件の仲介のみを行う会社もあれば、購入前の相談から物件選定、管理委託、売却までトータルでサポートしている会社もあります。購入後の管理や将来の売却まで相談できる会社を選べば、物件に関する悩みを一つの窓口に集約しやすくなるでしょう。 また希望するエリアが決まっている場合は、その地域に詳しい不動産会社を選ぶのがおすすめです。地域の賃貸需要や賃料相場、再開発の動向などに詳しい会社であれば、実態に即したアドバイスを受けられるでしょう。 日程調整してみる 税金や確定申告について相談したい場合:税理士 税金や確定申告について相談したい場合は、税理士が適しています。 不動産投資では所得税や住民税だけではなく、固定資産税や都市計画税、譲渡所得税、相続税など、さまざまな税金が関係してきます。また減価償却費やローン利息、管理費、修繕費などをどこまで経費として計上できるのか、損益通算の対象になるのかなど、判断が難しい場面も少なくありません。 税理士に相談すれば、確定申告の方法や経費計上、節税につながる可能性のある制度について確認できます。特に本業が忙しく確定申告に時間をかけられない方や、減価償却・損益通算・相続税対策について正しく理解したい方は、税理士に相談するのが望ましいです。 ただし、税理士によって得意分野は異なります。不動産投資に関する相談をする場合は、不動産所得や不動産売却、相続税などの支援実績がある税理士を選ぶとよいでしょう。 家計やライフプランへの影響を相談したい場合:ファイナンシャルプランナー(FP) 不動産投資が家計やライフプランに与える影響を相談したい場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)が相談先の一つになります。 FPは年金や生命保険・損害保険、税金、住宅ローン、資産運用、国の公的保障など、家計全体に関する幅広い知識を持つ専門家です。毎月の家計や老後資金、教育費、保険の見直し、ライフイベントに合わせた収支バランスなどについて相談できます。 例えば家族構成に応じて必要な保障額を確認したい場合や、公的保障と民間保険、不動産投資を含めた資産形成のバランスを見直したい場合には、FPに相談しましょう。特定の商品販売を前提としないFPであれば、家計全体を踏まえた第三者目線のアドバイスを受けられます。 一方で、FPは家計や資産形成全般の相談には適していますが、不動産投資の物件選定や投資を前提とした詳細な収支シミュレーションについては、不動産会社や不動産投資会社の方が具体的なアドバイスを受けやすい場合があります。家計全体の方向性はFP、具体的な物件や運用は不動産会社というように、相談内容に応じて使い分けるとよいでしょう。 ローンや融資について相談したい場合:金融機関 ローンや融資について相談したい場合は、不動産投資ローンを取り扱う金融機関が相談先になります。 金融機関では、借入可能額や金利、返済期間、返済方法、団体信用生命保険など、融資条件に関する相談ができます。不動産投資では、物件価格の多くをローンで賄うケースも多いため、どのくらい借り入れできるのか、月々の返済額がどの程度になるのかを確認しておくことが重要です。 不動産会社と提携している金融機関であれば、早い段階で事前審査を受けられる場合もあります。自身の年収や勤務先、勤続年数、自己資金、既存借入などに応じて、利用しやすいローン商品を確認できるでしょう。 またすでに物件を保有している場合でも、金利負担を見直したい、月々のキャッシュフローを改善したいといった相談ができる場合もあります。状況によっては、借り換えや返済計画の見直しを検討できることもあるため、融資条件に不安がある場合は金融機関へ相談してみましょう。 相続や法的トラブルについて相談したい場合:弁護士・司法書士 相続や法的トラブルについて相談したい場合は、弁護士や司法書士が相談先になります。ただし、弁護士と司法書士では対応できる内容が異なるため、相談内容に応じて使い分けることが大切です。 不動産の相続で親族間のトラブルが起きている場合や、遺産分割協議がまとまらない場合、賃貸借契約をめぐるトラブルが調停や裁判に発展しそうな場合は、弁護士に相談するのがよいでしょう。交渉や訴訟対応が必要な場面では、弁護士が対応する必要があります。一口に弁護士といっても得意分野が異なるため、相続案件や不動産に強い弁護士を選んでください。 一方、司法書士は不動産登記の専門家です。相続登記や名義変更、成年後見、遺言書に関する手続きなどについて相談できます。法的な争いがない相続手続きや登記手続きを進めたい場合は、司法書士が適しているでしょう。 誰に相談すればよいか分からない場合は、まず不動産会社に相談してみるのも方法の一つです。不動産会社によっては、税理士や弁護士、司法書士などの士業と連携しており、相談内容に応じて適切な専門家を紹介してもらえる場合があります。 不動産投資について専門家に相談するメリット 不動産投資は、物件選びやローン、税金、賃貸管理、売却など、検討すべき項目が多い投資です。インターネットや書籍で情報収集することも大切ですが、ご自身の年収や資産状況、投資目的に合う判断をするには、専門家に相談することが有効です。 不動産投資について専門家に相談する主なメリットは、以下の通りです。 table2 メリット 内容 セカンドオピニオンになる すでに提案を受けている物件や投資プランについて、別の視点から意見をもらえる 自分の状況に当てはめて専門的な知識を学べる ローンや税金、物件選び、リスクなどを、自分の状況に合わせて教えてもらえる 専門家ならではの視点を提案してくれる 空室リスクや修繕費、出口戦略など、見落としやすいポイントを確認できる 目的に合った投資方法を判断しやすくなる 年収や自己資金、ライフプランを踏まえて、無理のない投資規模や物件の方向性を検討できる リスクを理解した上で投資判断ができる メリットだけではなく、想定されるリスクや対策を把握した上で判断できる 不動産投資には税金やローン、相続など複数の分野が関わります。全てをご自身だけで調べようとすると時間がかかる上に、情報の正確性を判断しにくいこともあるでしょう。専門家に相談すれば、自分の状況に合わせて必要な情報を整理しやすくなります。 また物件の収益性やリスク、将来予測などは、一般的な知識だけでは通用しないことも少なくありません。プロの意見を聞くことで、提案内容を冷静に判断しやすくなります。 相談先によって得意分野は変わるので、状況に応じて適切な専門家を選びましょう。 不動産会社に相談する際に確認したいポイント 相談内容ごとに適した専門家は異なりますが、不動産投資の物件選びや収支計画などについて相談する場合は、不動産会社や不動産投資会社が主な相談先になります。 ただし、不動産会社や担当者によって、提案内容やサポート範囲、リスク説明の丁寧さは異なります。相談先を選ぶ際は、単に物件を紹介してもらえるかどうかだけではなく、長期的に頼れるか、信頼できる提案をしてくれるかを確認することが大切です。 ここでは、相談する不動産会社を選ぶ際に確認したいポイントを解説します。 投資目的や属性に合った提案をしてくれるか 不動産会社に相談する際は、ご自身の投資目的や希望、年収・自己資金・借入状況などの属性に合った提案をしてくれるかを確認しましょう。 不動産投資の目的は、資産形成、老後資金の準備、生命保険代わりの備え、節税、相続対策など人によって異なります。目的が違えば、選ぶべき物件やローンの組み方、運用方針も変わります。そのため、相談者の状況を丁寧に聞き取った上で、無理のない投資プランを提案してくれる会社を選ぶことが重要です。 一方で、目先の売り上げやノルマを優先している担当者の場合、投資目的や資金状況に合わない物件を強く勧めてくる可能性もあります。提案内容に違和感がある場合は、その場で結論を出さず、一度持ち帰って比較検討しましょう。必要に応じて、他の不動産会社に相談し、セカンドオピニオンを得るのも方法の一つです。 メリットだけではなくリスクも説明してくれるか 不動産投資には、家賃収入を得られる、資産形成につながる、節税効果が期待できるといったメリットがあります。一方で、空室リスクや家賃下落リスク、修繕費の増加、金利上昇、売却価格の下落などのリスクもあります。 そのため、メリットばかりを強調する担当者には注意が必要です。信頼できる不動産会社であれば、期待できる効果だけではなく、想定されるリスクや注意点についても丁寧に説明してくれます。 相談時には、リスクに対してどのような対策を取れるのかを質問してみましょう。例えば「空室が発生した場合はどうするのか」「家賃が下がった場合の収支はどうなるのか」「金利が上がった場合の返済額はどの程度変わるのか」などを確認すると、担当者の説明力や対応力を見極めやすくなります。 堅実なシミュレーションを提示してくれるか 物件を紹介してもらう際は、どのような収支シミュレーションを提示してくれるかも重要な判断材料です。 不動産投資では、物件価格や想定家賃だけではなく、ローン返済額、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料、空室リスク、家賃下落などを踏まえて収支を確認する必要があります。購入を後押しするために楽観的な数字だけを並べるのではなく、現実的な前提条件に基づいたシミュレーションを提示してくれる会社の方が信頼しやすいでしょう。 特に、長期運用を前提とする場合は、数年後・数十年後の収支も確認することが大切です。空室期間や修繕費の発生、金利上昇、売却価格の変動など、複数のパターンを想定したシミュレーションを出してもらえるか確認しておきましょう。 購入後の管理や売却まで相談できるか 不動産投資は、物件を購入して終わりではありません。購入後は入居者募集や家賃管理、修繕対応、空室対策、将来の売却など、長期的な運用が続きます。 物件を購入する不動産会社とは別に、賃貸管理会社を自分で探すケースもありますが、購入後の管理や売却まで一貫して相談できる会社を選べば、運用中の手間を抑えやすくなります。特に本業が忙しい会社員の方にとっては、管理や入居者対応を任せられる体制が整っているかどうかは重要なポイントです。 相談時には、グループ内に賃貸管理会社や売買仲介会社があるか、購入後の管理委託や売却相談まで対応しているかを確認しておきましょう。長期的に伴走してくれる不動産会社を選ぶことで、運用中の不安やトラブルにも対応しやすくなります。 不動産投資の相談前に準備しておきたいこと 不動産投資の相談先が決まったら、より具体的なアドバイスを受けるために事前準備を行います。目的や資金状況、将来のライフプランなどを整理しておくことで、相談相手も状況を把握しやすくなり、ご自身に合った提案を受けることが可能です。 相談前に準備しておきたい主な内容は、以下の4つです。 不動産投資を行う目的 年収や自己資金、借入状況 将来の資産計画やライフプラン 相談したい内容や不安点 不動産投資を行う目的 まずは、不動産投資を行う目的を整理しておきましょう。 不動産投資の目的は、老後に備えた資産形成や家計の収支改善など、人によって異なります。例えば、老後資金を準備したい方と相続税対策を重視したい方では、選ぶべき物件の種類や規模、運用方針が変わります。目的が曖昧なまま相談すると、提案内容が自分に合っているのか判断しにくくなるでしょう。 相談前には、将来どの程度の資産を形成をしたいのか、毎月のキャッシュフローを重視するのか、長期保有を前提にするのかなど、ご自身の考えを整理しておく必要があります。 年収や自己資金、借入状況 相談時には、年収や自己資金、借入状況など、ご自身の属性が分かる情報も整理しておきましょう。 不動産投資では、年収や勤務先、勤続年数、自己資金、既存の借入状況などによって、購入できる物件価格やローンの条件が変わります。これらの情報が明確であれば、相談相手も現実的な投資プランや融資の見通しを提案しやすくなります。 以下のような資料を事前に準備しておくのがおすすめです。 源泉徴収票 確定申告書 預貯金の明細 住宅ローンや自動車ローンなどの返済予定表 保有資産や借入状況が分かる資料 会社員であれば源泉徴収票、個人事業主や経営者であれば確定申告書などを用意しておくと、より具体的な相談がしやすくなります。自己資金の金額だけではなく、頭金に使える金額や、空室・修繕に備えて残しておきたい資金も整理しておきましょう。 将来の資産計画やライフプラン 不動産投資は長期的な運用が前提になるため、将来の資産計画やライフプランも家族と話し合っておきましょう。 例えば結婚や出産、子どもの教育費、住宅購入、転職、退職時期、親の介護など、今後のライフイベントによって必要な資金や借入に対する考え方は変わります。将来大きな支出が見込まれる時期を把握しておけば、無理のないローン返済計画や投資規模を検討することが可能です。 また「いつまでにどのくらいの資産を築きたいのか」「老後に毎月どの程度の収入を確保したいのか」などを考えておくと、長期的な目線で投資計画を立てやすくなります。 不動産投資は、現在の収支だけではなく、将来の家計にも影響します。相談前にライフプランを整理しておくことで、投資判断の優先順位も明確になりやすいでしょう。 相談したい内容や不安点 聞きたいことや不安に感じている点も、あらかじめまとめておきましょう。 不動産投資に関する相談では、物件選びやローン、税金、管理、空室リスク、修繕費、売却など、確認すべき内容が多くあります。相談時間が限られている場合、聞きたいことを整理していないと、重要な質問をしそびれてしまう可能性があります。 例えば、以下のような内容をメモしておくとよいでしょう。 自分の年収でどのくらいの物件を検討できるのか 毎月の収支はどの程度になりそうか 空室が出た場合の対応はどうなるのか ローン返済に無理はないか 税金や確定申告で注意すべき点はあるか 購入後の管理や売却まで相談できるか 不安点を事前に整理しておけば、相談相手からの説明が自分に合っているか判断しやすくなります。初回相談や無料面談を有効に活用するためにも、相談したい内容をリスト化しておきましょう。 不動産投資の悩みは目的に合った相談先を選ぼう 不動産投資では、物件選びや収支計画、ローン、税金、相続、購入後の管理など、さまざまな悩みが出てきます。相談内容によって適した専門家は異なるため、まずは「何を相談したいのか」を整理し、目的に合った相談先を選ぶことが大切です。 また相談する不動産会社を選ぶ際は、不動産投資に関する実績が豊富か、メリットだけでなくリスクも説明してくれるか、購入後の管理や売却まで相談できるかなどの確認も欠かせません。相談時間が限られている場合もあるため、事前に投資目的や年収・自己資金、借入状況、不安点などを整理しておくと、より具体的なアドバイスを受けやすくなります。 エスリード株式会社は、関西エリアを中心に30年以上にわたり新築分譲マンションの開発・販売を手がけてきた不動産デベロッパーです。物件選定から購入後の賃貸管理、将来の売却までトータルでサポートしており、不動産投資が初めての方でも、目的や資金状況に合わせて提案いたします。 「不動産投資の目的をはっきりさせたい」「納得した上で物件を選び、運用を進めたい」という方は、ぜひエスリードの無料面談をご利用ください。
不動産投資の経費はどこまで認められる? 必要経費の範囲や計上時の注意点を解説
不動産投資では家賃収入を得る一方で、ローンの利息や管理費、固定資産税、修繕費などさまざまな費用が発生します。これらのうち、不動産所得を得るために必要な支出は経費として計上できますが、全ての支出が認められるわけではありません。 経費にできる範囲を正しく理解していないと、本来計上できる費用を見落として税負担が大きくなったり、反対に経費にできない支出を含めてしまい、税務調査で指摘を受けたりする可能性があります。 本記事では、不動産投資で経費にできるもの・できないものを一覧でご紹介します。経費にできるか迷いやすい費用や、経費計上する際の注意点も解説するので「不動産投資の経費はどこまで認められるのか」を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。 suggest2 不動産投資では、ローンの利息や管理費、固定資産税、減価償却費など、家賃収入を得るために必要な支出を経費として計上できる ローンの元本返済分や所得税・住民税、私的な支出、罰金・反則金などは、不動産投資の経費として認められない 修繕費と資本的支出の違いや家事按分の考え方、経費を計上する年度などを理解し、根拠を残して正しく申告することが大切 不動産投資で計上できる経費を把握しておくべき理由 不動産投資で家賃収入を得ている場合、原則として確定申告が必要です。確定申告では、家賃収入などの総収入金額から必要経費を差し引き、以下の式で不動産所得を計算します。 不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費 不動産投資ではローンの利息や管理費、固定資産税、減価償却費など、さまざまな経費が発生します。これらを正しく計上できれば、課税対象となる不動産所得を適切に算出することが可能です。また不動産所得が帳簿上の赤字になった場合には、条件を満たせば給与所得などから赤字分を差し引き(損益通算)し、当年度の課税所得を圧縮できる可能性があります。そのため経費を漏れなく計上することは、所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があります。 一方で経費として認められる範囲を誤って計上すると、税務調査で指摘を受けたり、修正申告が必要になったりする恐れがあるため注意が必要です。 また節税だけを目的に支出を増やしすぎると、手元資金が減り、資金繰りに悪影響を及ぼす可能性もあります。不動産投資を安定して続けるためには「どこまで経費にできるのか」を理解し、利益と節税のバランスを考えながら正しく申告しましょう。 不動産投資の経費はどこまで認められる? 経費とは、事業活動を行う上で必要になる費用のことです。不動産投資の場合は、不動産を運用するために必要な支出や、賃貸経営に関連する業務上の費用が経費として認められます。 経費として計上できる金額には、一律の上限が決められているわけではありません。ただし、支出した費用は不動産投資との関連性や必要性を説明できることが前提です。また原則として取引が発生した時点で経費を計上しますが、建物や設備のように複数年にわたって使用する資産は、減価償却によって年数に応じて経費化する必要があります。 不動産投資で経費にできる項目は、事業的規模かどうかによっても変わります。ご自身の運用状況に当てはめながら、経費に計上できる範囲を確認しましょう。 家事按分とは? 家事按分とは、事業用と私用が混在している費用について、事業に使用した分だけを合理的な割合で分けて経費計上することです。 例えば、自宅の一部を不動産投資の資料整理や管理会社との連絡に使っている場合、自宅の通信費や電気代の一部を事業用として按分できる可能性があります。ただし、私用部分まで経費に含めることはできません。 家事按分の割合は、使用面積や使用時間、走行距離、使用日数など、客観的に説明できる基準で算出します。主な考え方は、以下の通りです。 table2 費用の種類 按分の考え方 家賃 居住スペースと事業で使用しているスペースの面積割合、または事業で使用している時間で按分する 電気代 事業で使用した時間や、電源の差し込み口数などを基に按分する ガソリン代 物件確認や管理会社との打ち合わせに使った分の走行距離、または使用日数を基に按分する 通信費 不動産会社・管理会社との連絡や情報収集に使った割合を基に按分する 家事按分する費用は、原則、支出する金額のうち半分以上が業務の遂行上直接必要であった場合に限ります(※)。ただし、業務利用であることを明確に区分できる場合は、半分以下でも必要経費に算入可能です。 そのため家事按分を行う際は「何となく半分」など感覚で割合を決めるのではなく、面積・時間・距離などの根拠を残しておくことが重要です。領収書や明細だけではなく、使用目的や計算方法のメモも残しておくと、税務調査で確認された際に説明しやすくなります。 ※参考:国税庁.「〔家事関連費(第1号関係)〕」.(参照:2026-06-08). 不動産投資で経費にできるもの一覧 確定申告を正しく行うためには、不動産投資で経費として計上できるものを把握しておきましょう。一般的に不動産投資で経費にできる主な費用は、以下の通りです。 table2 費用の種類 主な内容 ローンの利息 不動産投資ローンの返済額のうち、利息に当たる部分 管理費・修繕積立金 マンションの管理組合に支払う管理費や、大規模修繕に備える積立金 賃貸管理手数料 管理会社へ支払う管理委託手数料、入居者対応や家賃回収に関する費用 仲介手数料 入居者募集時に支払う仲介手数料など 税金 固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など 保険料 火災保険料、地震保険料、施設賠償責任保険料など 減価償却費 建物や建物附属設備などの取得費を、法定耐用年数に応じて分割して計上する費用 修繕費 原状回復費用、故障した設備の修理費用など 専門家への報酬 税理士、司法書士、弁護士などに支払う報酬 交通費・通信費・情報収集費 物件確認や管理会社との打ち合わせにかかる交通費、通信費、書籍代、セミナー費用など それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。 ローンの利息 不動産投資ローンの返済額には「元本返済分」と「利息部分」が含まれています。このうち利息に当たる部分は経費として計上することが可能です。 ローンの返済方法には、毎月の返済額が一定になる元利均等返済と、返済額のうち元金部分の金額が一定になる元金均等返済の2種類があります。どちらも返済当初の利息割合が大きく、徐々に減っていく仕組みです。金融機関から発行される返済予定表などで、元本と利息の内訳を確認し、どの程度経費計上できるのかチェックしておきましょう。 なお不動産所得が赤字になった場合、土地取得にかかる借入金の利子に相当する部分は、損益通算の対象から除かれます。経費にできるものの中には、ケースバイケースの判断が必要なものもあるため、対応に迷う場合は税理士などに確認しましょう。 管理費・修繕積立金 区分所有法第19条に基づき、オーナーにはマンションの管理組合に支払う管理費や修繕積立金の支払いが義務付けられているため、経費として計上できます(※1)。 管理費とは共用部分の清掃や設備点検、管理人業務など、物件の維持管理に使われる費用です。修繕積立金とは、将来の大規模修繕に備えて積み立てる費用です。原則として、経費は取引が発生したタイミングで計上するものですが、区分マンションの修繕積立金については、以下の条件を満たす場合に、支払った年の必要経費として認められます(※2)。 オーナーが管理組合に対して修繕積立金の支払い義務を負っている 管理組合が受け取った修繕積立金をオーナーへ返還する義務を負っていない 修繕積立金が将来の修繕のみに使用され、他の目的に流用されない 修繕積立金の金額が修繕計画に基づき、合理的な方法で算出されている 修繕積立金は金額が大きくなることもあるため、管理規約や長期修繕計画、支払い明細などを保管しておきましょう。 ※1参考:e-Gov.「建物の区分所有等に関する法律」.(参照:2026-06-08). ※2参考:国税庁.「賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い」.(参照:2026-06-08). 賃貸管理手数料 不動産投資では、オーナー自身が管理業務を行うことも可能です。しかし入居者募集や家賃の入金確認、修繕の手配、トラブル対応などには手間がかかるため、管理会社に委託するケースも多いです。 これらの作業を不動産管理会社に委託している場合、管理会社に支払う賃貸管理手数料は経費として計上できます。 管理委託料の他、入居付けのための広告料や更新手続きに関する費用なども、経費にできる可能性があります。ただし、管理会社によって委託できる業務や手数料は異なるため、契約内容や請求書の内訳を確認しておきましょう。 仲介手数料 仲介手数料は、支払うタイミングによって経費の扱いが異なります。入居者を募集する際に不動産会社へ支払う仲介手数料は、賃貸経営に必要な費用として不動産所得の経費にできます。 一方、物件購入時に支払う仲介手数料は、物件の取得にかかった費用として扱われるのが一般的です。建物部分に対応する金額は減価償却の対象になり、土地部分に対応する金額は売却時に取得費として計上されます。購入した年に全額を経費にできるわけではありません。 また物件売却時に支払う仲介手数料は、不動産所得の経費ではなく、譲渡所得を計算する際の譲渡費用に含めます。同じ仲介手数料でも、支払い目的によって処理が異なる点を押さえておきましょう。 固定資産税・都市計画税などの税金 投資用物件にかかる税金も、不動産投資に必要な支出として経費にできます。 経費として計上できる主な税金には、以下のようなものがあります。 固定資産税 都市計画税 不動産取得税 登録免許税 印紙税 など 固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に課される税金です。投資用物件を所有している限り発生する費用なので、賃貸経営に関係する税金として経費にできます。 ただし、所得税や住民税は個人に課される税金であり、不動産所得を得るための必要経費にはなりません。経費にできる税金とできない税金を混同しないよう注意しましょう。 火災保険料・地震保険料 投資用物件にかける火災保険料や地震保険料も、経費として計上できます。物件の損害に備えるための保険であり、賃貸経営を続ける上で必要な支出と考えられるためです。 火災保険や地震保険の他、施設賠償責任保険や孤独死保険など、投資用物件の運用に関係する損害保険料も経費にできる場合があります。 減価償却費 減価償却費も、不動産投資で経費にできる代表的な費用です。 減価償却とは、時間の経過によって価値が下がる事業用の資産の購入費用を、法定耐用年数に応じて分割し、毎年少しずつ経費として計上する仕組みです。不動産投資では、建物や建物附属設備などが減価償却の対象になります。 減価償却費はその年に現金を支払っていなくても、帳簿上の経費として計上できる点が特徴です。支出を伴わない経費として不動産所得を圧縮し、税負担の軽減につながる可能性があります。 減価償却の対象になる主な資産には、以下のようなものがあります。 建物 建物附属設備(電気設備やエアコン、ガス設備など) 構築物(ブロック塀や樹木、貯水槽など) 車両(不動産投資に関する分のみ) 器具・備品(不動産投資に関する分のみ) など 建物や設備の構造・用途によって法定耐用年数や計算方法が異なります。減価償却の詳しい仕組みや計算方法については、以下の記事も併せてご覧ください。 ▼不動産投資における減価償却とは? 計算方法や税務・収支に与える影響を解説 不動産投資における減価償却とは? 計算方法や税務・収支に与える影響を解説 修繕費 投資用物件の機能を維持するための修理や原状回復にかかった費用は、修繕費として経費にできます。例えば、退去後の壁紙の張替えやハウスクリーニング、故障した給湯器の修理、壊れた設備の交換など、物件を通常の状態に戻すための費用は修繕費に該当します。 税理士・司法書士など専門家への報酬 不動産投資に関連して専門家へ支払った報酬も、経費にできる場合があります。 例えば確定申告の書類作成を依頼した税理士への報酬や、賃貸借契約・家賃滞納トラブルについて相談した弁護士費用などは、不動産所得を得るために必要な支出として経費計上が可能です。 司法書士への報酬については、登記手続きの内容によって扱いが異なります。投資用物件の取得に関する登記費用は取得費に含める一方、賃貸経営に関係する手続きや相談にかかる費用であれば、経費として扱えるケースもあります。 専門家への報酬は、相談内容や依頼内容によって処理が変わることがあるため、請求書の内訳を確認し、不動産投資に関係する部分を区分しておきましょう。 交通費・通信費・情報収集費 不動産投資に関する業務で発生した交通費や通信費、情報収集費も、経費にできる場合があります。 交通費には、物件の下見や管理会社との打ち合わせ、不動産会社との面談などにかかった電車代、ガソリン代、宿泊費などが含まれます。遠方の物件を確認するために出張した場合も、不動産投資との関連性が説明できれば経費にできる可能性があります。 通信費は管理会社や入居者、不動産会社との連絡に使うスマートフォン代やインターネット回線費などです。ただし、私用と兼用している場合は、事業で使った割合に応じて家事按分する必要があります。 情報収集費には、不動産投資に関する書籍や新聞の購入費、セミナー参加費、コンサルティング費用などが含まれます。ただし、不動産投資と関係のない自己啓発や資格取得の費用は、経費として認められないため注意しましょう。 事業的規模の場合のみに認められる経費 不動産賃貸業が事業的規模と認められる場合、通常の不動産所得よりも経費として認められる範囲が広がることがあります。事業的規模かどうかは、一般的に独立家屋ならおおむね5棟以上、アパートやマンションならおおむね10室以上を貸し付けているかどうかで判断されます。 事業的規模の場合に経費として認められるものは、以下の通りです。 不動産賃貸業に従事している家族への給与 回収不能になった未払い賃料 建物の取り壊しによる損失 延納にかかる利子税 など 事業的規模に該当するかどうかは、税務上の判断が必要になることもあるため、物件数が増えてきた場合や一棟物件を所有している場合は、税理士などに相談してみましょう。 不動産投資で経費にできないもの一覧 不動産投資に関係しているように見えても、税務上は経費として認められないものもあります。経費にできるものだけではなく、経費にできないものも把握し、誤った申告や税務調査での指摘を防ぎましょう。 不動産投資で経費にできない主な費用は、以下の通りです。 table2 費用の種類 主な内容 ローンの元本返済分 ローン返済額のうち、借入金の元本を返済している部分 所得税・住民税 個人に課される税金であり、不動産所得を得るための必要経費にはならない 私的な支出 プライベートな旅行代、飲食費、衣服、腕時計、バッグなど 罰金・反則金 スピード違反や駐車違反などによる罰金・反則金 資格取得費など投資と直接関係しない費用 事業に関係ない資格取得にかかるスクール代や受験料など それぞれ詳しく見ていきましょう。 ローンの元本返済分 不動産投資ローンの返済額のうち、元本返済分は経費にできません。 ローンの元本返済分は、金融機関から借りたお金を返済している部分です。支出として現金は出ていきますが、借入金という負債を減らしているだけであり、不動産所得を得るための費用としては扱われません。 所得税・住民税 先述した通り、所得税や住民税は不動産投資の経費にはできません。 所得税や住民税は、不動産投資の有無にかかわらず、個人の所得に対して課される税金です。不動産所得を得るために直接必要な支出ではないため、必要経費には含められません。 私的な支出 不動産投資と直接関係のない私的な支出は、経費にできません。 例えばプライベートな旅行代や飲食費、日用品の購入費などは、不動産所得を得るための支出ではないため経費には含められません。また洋服や腕時計、バッグなどのファッションアイテムも、たとえ不動産会社との打ち合わせ用に購入したものであっても、私的な利用との区別が難しいため、経費として認められにくい費用です。 罰金・反則金 不動産会社との打ち合わせや物件の内覧に向かう途中で発生したものであっても、スピード違反や駐車違反などで科された罰金・反則金は、経費にできません。交通違反による罰金や反則金は個人が負担すべきものとして扱われるためです。 なお、駐車違反に伴うレッカー移動代などは、状況によって扱いが異なる場合があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に確認するとよいでしょう。 資格取得費など投資と直接関係しない費用 資格取得費なども、不動産投資と直接関係しない場合は経費にはできません。 資格取得のためのスクール代や受験料は、個人の知識習得やスキルアップのための支出と判断されることがあります。たとえ宅地建物取引士など不動産に関連する資格であっても、不動産所得を得るために直接必要な費用とはいえないため、経費として認められにくいでしょう。 資格取得費と情報収集費は判断が分かれやすいため、支出の目的や内容を整理し、不動産投資との関連性を説明できるようにしておくことが大切です。 不動産投資で経費にできるか迷いやすい費用 不動産投資に関する支出の中には、経費にできるかどうか判断に迷いやすいものもあります。特に工事費や交際費は、支出の目的や内容によって税務上の扱いが変わるため注意が必要です。 ここでは、不動産投資で経費にできるか迷いやすい費用について解説します。 資本的支出に該当する工事費 物件の修理や改修にかかった費用は、内容によって「修繕費」と「資本的支出」に分かれます。 先述した通り、修繕費とは建物や設備を元の状態に戻すための費用です。例えば故障したエアコンを修理する場合や、退去後に汚れた壁紙を張り替える場合など、物件の維持管理や原状回復を目的とした支出は修繕費として経費にできる可能性があります。 一方資本的支出とは、固定資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりするための支出です。例えば不具合のあるエアコンを修理するのではなく、より高性能な最新機種へ交換し、物件の機能や価値が向上した場合は、資本的支出に該当することがあります。 資本的支出に該当する場合、その年に一括で経費計上するのではなく、資産として計上し、減価償却によって複数年に分けて経費化します。修繕費として一括計上できるか、資本的支出として処理すべきかで、その年の不動産所得に与える影響が変わるため、判断を誤らないようにしましょう。 修繕費か資本的支出か迷った場合は、以下のような流れで確認すると判断しやすくなります。 table2 判断基準 修繕費か資本的支出か 1件あたりの支出額が20万円未満か 当てはまる場合は「修繕費」に該当 おおむね3年以内の周期で行われる修理・改修か 当てはまる場合は「修繕費」に該当 維持管理や原状回復を目的とした支出か 当てはまる場合は「修繕費」に該当 資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりする支出か 当てはまる場合は「資本的支出」に該当 1件当たり60万円未満、または前期末の取得価額のおおむね10%以下か 当てはまる場合は「修繕費」に該当 工事内容によって判断が分かれる場合もあるため、見積書や請求書には工事内容を具体的に記載してもらい、必要に応じて税理士などに確認しましょう。 交際費 不動産投資に関連する相手との会食代や贈答品代は、内容によって交際費として経費にできる場合があります。 例えば、以下のような相手との打ち合わせを兼ねた飲食代や贈答品代は、不動産投資との関連性を説明できれば、経費として認められるでしょう。 管理会社の担当者 賃貸仲介会社の担当者 売買仲介会社の担当者 顧問税理士・会計士 業務を依頼している司法書士・弁護士 など ただし、交際費として認められるためには、不動産投資との関連性があることが前提です。一人で行った飲食や家族・友人との食事、取引相手が参加していないゴルフ、一般的な常識の範囲を超えた高額な贈り物などは、経費として認められない可能性が高いでしょう。 また打ち合わせを兼ねた会食であっても、領収書だけでは目的や相手が分かりにくい場合があります。経費として計上する際は、日付・参加者・目的・打ち合わせ内容などをメモしておくことが望ましいです。 交際費は私的な支出との境界が曖昧になりやすいため「不動産投資に必要な支出である」ときちんと説明できるかどうかを基準に判断しましょう。 不動産投資で経費計上する際の注意点 不動産投資の経費として認められるかどうかは、項目によって専門的な判断を要する場合もあります。正しく確定申告を行うためにも、経費をまとめる際に注意しておきたい3つのポイントを解説します。 当年度に発生した経費のみを計上する 家事按分が必要な費用は根拠を残す 過度な経費計上は税務調査で指摘される可能性がある 当年度に発生した経費のみを計上する 不動産投資で経費を計上する際は、どの年度の経費として処理するのかを誤らないよう注意しましょう。 必要経費として算入できる金額は、原則として「その年において債務が確定した金額」です。つまりその年に支払った費用であっても債務が確定していないものは、その年の必要経費にはなりません。反対にまだ支払っていない場合でも、その年に債務が確定していれば、その年の必要経費として計上することが可能です。 ここでいう「債務が確定している」とは、原則として以下の3つを満たす状態を指します。 その年の12月31日までに債務が成立している その年の12月31日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している その年の12月31日までに、金額を合理的に算定できる 例えば年内に修繕工事が完了し、請求金額も確定している場合は、実際の支払いが翌年になっても当年度の経費として計上できる可能性があります。一方で、翌年実施予定の修繕費を年内に前払いした場合などは、当年度の経費として全額計上できるとは限りません。 また火災保険料や地震保険料など複数年分を一括で支払う費用は、支払った年に全額を経費にするのではなく、保険期間に応じてその年に対応する分を計上します。建物や設備の取得費についても、購入した年に全額を経費にするのではなく、減価償却によって複数年に分けて計上する必要があります。 領収書や請求書、契約書などを保管し、支出の発生日や対象期間、金額が分かるように整理しておきましょう。 ※参考:国税庁.「No.2210 必要経費の知識」.(参照:2026-06-08). 家事按分が必要な費用は根拠を残す 通信費や車両費、電気代など、事業用と私用が混在しやすい費用は、事業に使った分だけを家事按分して経費計上します。家事按分を行う場合は、以下のような按分割合の根拠を残しておくことが重要です。 table2 経費の項目 残しておくべき根拠 主な書類 家賃や電気代 使用面積や使用時間 自宅の図面や作業時間がかかれた日報、機器を使った時間が書かれたメモなど 車両費やガソリン代 いつ・どこへ・何の目的で・どのくらいの距離を走行したかの記録 車両リースの領収書、給油時の領収書、車両を使った日の議事録など 毎年の按分割合が大きく変わる場合も、不自然に見られる可能性があるため、継続性のある基準で計算しましょう。 過度な経費計上は税務調査で指摘される可能性がある 不動産投資で経費を計上する際は、過度な経費計上に注意が必要です。私的な支出を経費に含めたり、根拠のない家事按分を行ったりすると、税務調査で指摘を受ける可能性があります。 国税庁の「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、法人税・消費税の実地調査件数は5万4,000件、追徴税額の総額は3,407億円でした。また調査1件当たりの追徴税額は634万2,000円とされています(※)。これは法人税などに関する調査結果ですが、税務調査では申告内容の正確性が確認され、誤りがあれば追加の税負担が発生する可能性があることを示しています。 税務調査を受けた後に申告内容の誤りが見つかると、修正申告が必要になる場合があります。また本来納めるべき税額より少なく申告していた場合は、過少申告加算税や延滞税などが発生する可能性もあります。 追徴課税を避けるためにも、不動産投資において必要経費として認められる範囲を理解し、領収書や請求書、契約書、按分計算の根拠などを整理しておきましょう。 ※参考:国税庁.「令和6事務年度法人税等の調査事績の概要」.(参照:2026-06-08). 不動産投資の経費として認められる範囲を理解し、正しく計上しましょう 不動産投資では、管理費や修繕費、固定資産税、減価償却費など、家賃収入を得るために必要な支出を経費として計上できます。経費を正しく計上すれば、不動産所得を適切に算出でき、結果として所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があります。 一方で、経費になるものとならないものを十分に把握しないまま申告すると、税務署から指摘を受けかねません。修繕費と資本的支出の区分や家事按分の割合など、判断に迷いやすい項目については、きちんと根拠を残しておきましょう。 誤った経費計上によって修正申告が必要になれば、追加の税金が発生する可能性もあります。追徴課税を避けるためにも、不動産投資で経費として認められる範囲を理解し、領収書や請求書、契約書などを整理した上で、正しく申告する必要があります。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談してみましょう。 エスリード株式会社は、関西エリアを中心に新築分譲マンションの開発・販売を手がけてきた不動産デベロッパーです。物件選定から収支シミュレーション、購入後の賃貸管理、将来の売却までトータルでサポートしているため、不動産投資にかかる費用や長期的な収支についても相談しやすいです。 「不動産投資にどのような費用がかかるのか知りたい」「購入後の収支や管理費用も踏まえて投資判断をしたい」という方は、ぜひエスリードへご相談ください。
不動産投資物件の家賃は値上げできる? 正当な理由や交渉の流れ、注意点を解説
不動産投資物件を運用していると、周辺相場の上昇や固定資産税・管理コストの増加などにより「現在の家賃を見直した方がよいのでは」と感じる場面があります。家賃の値上げ自体は相応の理由があれば可能なことですが、オーナーの判断だけで一方的に行えるものではありません。原則として入居者との合意が必要です。 そのため家賃の値上げ交渉を進める際は、正当な理由や客観的な根拠を整理し、入居者に納得してもらいやすい形で伝えることが欠かせません。値上げ額や通知のタイミングを誤ると、退去やトラブルにつながる恐れもあります。 本記事では、不動産投資物件の家賃を値上げできるケースや、正当な理由として認められやすい内容、管理会社と連携して交渉を進める流れを解説します。家賃を適正な水準に見直し、収益改善につなげたい方はぜひ参考にしてください。 suggest2 不動産投資物件の家賃は、周辺相場や税負担、経済事情の変動など正当な理由があれば値上げ交渉できる 家賃の値上げ交渉では、客観的な根拠を用意し、管理会社と連携しながら入居者との合意形成を目指すことが重要 家賃の値上げには退去や法定更新のリスクもあるため、増額幅や通知のタイミングを慎重に検討する必要がある 不動産投資物件の家賃は値上げできる? 不動産投資物件の家賃は、一定の条件を満たせば値上げ交渉が可能です。家賃は一度決めたら変えられないものではなく、相応の理由があれば、オーナー側から見直しを求められます。家賃を適正な水準に見直せれば、毎月のキャッシュフローを改善できます。修繕費や空室リスクへの備えも確保しやすくなり、次の物件購入に向けた原資づくりにもつながるでしょう。家賃収入が増えることで物件の収益性が高まり、将来売却する際にも高い評価を得られる可能性があります。 家賃の値上げ・値下げの根拠となるのは、借地借家法第32条です。借地借家法とは、土地や建物を借りる人が、オーナーから不当に立ち退きを求められたり、不利な条件を押し付けられたりしないよう保護するための法律です。 同法では、土地や建物に対する税金の増減、経済事情の変動、周辺の類似物件の家賃相場などによって現在の家賃が不相当になった場合、オーナー・入居者のどちらからでも賃料の増減を請求できると定められています。ただし、実際に家賃を変更するには、原則として入居者の同意が必要です。オーナーの一存で突然大幅に値上げしたり、十分な説明をしないまま新しい家賃を請求したりすると、入居者とのトラブルにつながる恐れがあります。また賃貸借契約で一定期間は家賃を増額しない旨の特約がある場合は、そちらが優先されるので注意が必要です。 家賃の値上げ交渉を進める際は、入居者の承諾をスムーズに得られるよう理由を整理しておくことが欠かせません。 ※参考:e-Gov.「借地借家法 第32条」.(参考:2026-06-05). 家賃の値上げ交渉で正当な理由になりやすいケース オーナー側から賃料の値上げを交渉する際、入居者が納得できるような理由を丁寧に伝える必要があります。物価上昇に伴い、月々のキャッシュフローを見直したいと考えている場合は、ご自身の物件で当てはまる正当な理由があるか、確認してみましょう。 ここでは以下5つの理由について、詳しく解説します。 周辺相場と比べて家賃が低い 固定資産税・都市計画税などの税負担が増えている 建物の維持費や管理コストが上昇している 物価上昇によって実質的に家賃が目減りしている リノベーションや共用部の設備改善で物件価値が高まっている 周辺相場と比べて家賃が低い 現在の家賃が周辺相場と比べて低い場合は、家賃の値上げ交渉を行う理由になりやすいです。賃貸物件の家賃相場は、エリアの利便性や駅からの距離、築年数、間取り、設備、管理状態などによって異なります。そのため現在の家賃設定が適正かどうかを確認する際は、周辺にある類似物件の家賃と比較する方法が有効です。 例えば、オーナーチェンジで購入した物件や相続した物件では、以前の契約条件のまま長期間家賃が据え置かれているケースがあります。その間に周辺相場が上がっていれば、現在の家賃が相場より低くなっている可能性があります。 また物件周辺で再開発が進んだ、新しい駅ができて交通利便性が高まった、商業施設やオフィス、学校など人の集まる施設が近くにできたといった場合も、周辺の家賃相場が上昇することがあります。このような環境変化があれば、周辺相場との差を根拠に家賃の見直しを提案しやすいでしょう。 ただし、単に「周辺より安い」と伝えるだけでは、入居者に納得してもらいにくいです。交渉時は、近隣の類似物件の募集賃料や成約事例、駅距離・築年数・設備条件などを整理し、賃料の算出方法が合理的であることを示せる資料を用意しておきましょう。 固定資産税・都市計画税などの税負担が増えている 固定資産税や都市計画税など、物件を保有するための税負担が増えている場合も、家賃の値上げ交渉の理由になり得ます。固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に課される税金です。都市計画税は、道路や公園、下水道などの都市計画事業や土地区画整理事業に充てるため、一定の区域内にある土地・建物に課される税金です。 これらの税額は、土地や建物の評価額などを基に計算されます。再開発や交通網の整備などによって不動産の評価額が上がれば、固定資産税や都市計画税の負担が増えることがあります。また土地の評価額が大きく変わっていない場合でも、負担調整措置などによって税額が段階的に上がるケースもあります。 税負担の増加は、オーナーの努力だけで避けられるものではありません。そのため、固定資産税や都市計画税の負担が増えている場合は、課税明細書などを確認した上で、家賃見直しの根拠として整理しておくとよいでしょう。固定資産税評価額は原則として3年に一度評価替えが行われるため、納税通知書や課税明細書を定期的に確認しておくことも大切です。 建物の維持費や管理コストが上昇している 建物の維持費や管理コストの上昇も、家賃の値上げ交渉ができる理由の一つです。借地借家法第32条では、土地・建物に対する「租税その他の負担」の増減が、賃料増減請求の要素として示されています。 ここでいう「その他の負担」には、建物を維持管理するために必要な費用も含まれると考えられます。例えば管理費や共益費、火災保険料、設備点検費、維持修繕費などです。 近年は人件費や資材費の上昇により、建物の管理や修繕にかかるコストが増えています。エレベーターや給排水設備、外壁、屋上防水などの修繕費が上がれば、従来の家賃水準では運営コストを賄いにくくなる場合もあるでしょう。 特に大規模修繕を行った場合は、建物の安全性や快適性の向上につながるため、入居者にとっても一定のメリットがあります。単に「費用が増えた」と伝えるのではなく「修繕によって住環境がどのように改善されたのか」や「今後も安心して住み続けられる管理体制を維持するための見直しである」ということを説明すると、理解を得やすくなります。 物価上昇によって実質的に家賃が目減りしている 物価上昇によって現在の家賃の実質的な価値が下がっている場合も、値上げ交渉の理由になることがあります。借地借家法第32条では、土地・建物の価格の変動だけではなく、その他の経済事情の変動によって家賃が不相当になった場合も、賃料の増減を請求できると定められています。 例えば長年家賃を据え置いている物件では、契約当初と比べて物価水準が変わっていることがあります。家賃額そのものは変わっていなくても、物価が上昇すれば、同じ金額で得られる実質的な価値は下がります。その結果、現在の家賃が経済状況に見合わなくなるケースがあるでしょう。 ただし、経済事情の変動を理由にする場合は、一時的な事情ではなく、継続的な物価上昇や維持コストの増加などを説明できることが求められます。感染症の一時的な流行や短期的な景気変動だけでは、家賃改定の理由として十分と判断されにくいケースもあるため、根拠となる資料を整理しておくことが大切です。 リノベーションや共用部の設備改善で物件価値が高まっている リノベーションや共用部の設備改善によって物件価値が高まっている場合も、家賃を見直す理由になります。特に前の入居者が退去した後に原状回復だけではなくリノベーションを行い、室内の使いやすさやデザイン性を高めた場合は、新たな募集時に家賃を上げやすくなります。 例えば1Kで不足しやすい収納を補うために壁面収納を設置したり、ターゲットを新婚世帯やDINKSに広げるために間取りを変更したりするケースなどです。設備や間取りが入居者ニーズに合えば、従来より高い家賃でも選ばれやすくなるでしょう。 またエントランスや共用廊下のリニューアル、無料インターネットの導入、屋根付き駐輪場や宅配ボックスの設置など、共用部の改善も家賃見直しの材料になります。入居者の利便性や満足度につながる設備投資であれば、値上げ交渉の際にも納得感を得やすくなります。 ただし、既存の入居者に対して家賃の値上げを交渉する場合は、入居者自身がその改善によるメリットを実感できるかどうかがポイントです。リノベーションや設備改善を理由にする際は、どのような点が改善され、入居者にどのような利便性があるのかを具体的に説明しましょう。 家賃の値上げ交渉で正当な理由として認められないケース 家賃の値上げ交渉を検討する際は、不要なトラブルを避けるためにも正当な理由として認められにくいケースも理解しておきましょう。 オーナーの個人的な都合 賃貸借契約書に特約が明記されている 入居者の合意なく一方的に値上げしようとしている それぞれのケースについて解説します。 オーナーの個人的な都合 オーナーの個人的な都合だけを理由にした家賃の値上げは、正当な理由として認められにくいです。 例えば「収益をもっと増やしたい」「ローン返済が厳しくなった」「他の支出が増えた」といった事情は、オーナー側の経営上・生活上の都合に当たります。こうした理由だけでは、現在の家賃が周辺相場に対して不相当であることや経済事情の変動によって家賃改定が必要であることを説明しにくいでしょう。 もちろん、不動産投資では収益性の確保も大切です。しかし家賃の値上げ交渉を行う際は、オーナーの都合ではなく、周辺相場との乖離や税負担・維持管理費の増加など、客観的な根拠を入居者に示す必要があります。 賃貸借契約書に特約が明記されている 賃貸借契約書に「一定期間は賃料を増額しない」といった特約が明記されている場合、その期間中の値上げは認められにくくなります。借地借家法第32条では、現在の家賃が不相当になった場合に賃料の増減を請求できるとされていますが、一定期間は建物の賃料を増額しない旨の特約がある場合は、その定めに従うとされています。 そのため家賃の値上げを検討する際は、まず賃貸借契約書の内容を確認しましょう。更新時期や賃料改定に関する条項、増額しない特約の有無を把握した上で、交渉できるタイミングや条件を整理しておく必要があります。 入居者の合意なく一方的に値上げしようとしている 家賃の値上げは、オーナーが通知すれば自由に変更できるものではありません。原則として、入居者との合意が必要です。 借地借家法では、現在の家賃が不相当になった場合に賃料の増額を請求できます。ただし、請求しただけで直ちに新しい家賃が確定するわけではなく、入居者が応じない場合は協議や法的手続きによって解決を図ることになります。増額について協議が整わない間は、入居者は相当と認める額を支払えば足りるとされています。 そのため、入居者の合意を得ないまま一方的に家賃を引き上げたり、説明不足のまま新しい金額を請求したりするのは避けるべきです。値上げ交渉を行う際は、借地借家法の原則に沿って、理由や根拠を丁寧に説明し、入居者との合意形成を目指しましょう。 管理会社と連携して家賃の値上げ交渉をする流れ 不動産投資を副業で行っている方の多くは、自主管理ではなく管理会社に物件管理を委託しているでしょう。そのため家賃の値上げを検討する際も、管理会社と連携しながら進めるケースが一般的です。 管理会社は、近隣の賃料相場や入居者対応の実務に詳しいため、値上げ額の妥当性や伝え方について相談しやすい存在です。家賃の値上げを行う際は、入居者とのトラブルを避けるためにも、管理会社などのプロの力を借りながら慎重に進めましょう。 ここでは、管理会社と連携して家賃の値上げ交渉を進める流れを解説します。 1.近隣の賃料相場をデータで把握する まずは、現在の家賃が周辺相場と比べて適正かどうかを確認します。不動産ポータルサイトや管理会社が保有する募集データなどを活用し、同じエリアで条件が近い物件の家賃水準を調べましょう。 比較する際は、所在地だけではなく築年数や専有面積、間取り、駅からの距離、設備、階数、管理状態なども見る必要があります。条件が大きく異なる物件と比較しても、入居者に納得してもらえる根拠にはなりにくいためです。 また入居者側も、自分で相場を調べた上で交渉してくる可能性があります。オーナー側も複数のポータルサイトや類似物件の募集情報を確認し、客観的なデータを用意しておくと、値上げの根拠を説明しやすくなります。 2.値上げの正当な理由と条件を管理会社とすり合わせる 次に、家賃を値上げしたい理由と条件を管理会社とすり合わせます。周辺相場より家賃が低いのか、固定資産税や管理コストが増えているのか、修繕や設備改善によって物件価値が高まっているのかなど、値上げの根拠を整理しましょう。 管理会社は地域の家賃相場や入居者の反応を把握しているため、希望する値上げ額が市場価格と比べて妥当かどうかについて意見をもらえます。オーナーが希望する金額と、入居者に受け入れられやすい金額に差がある場合は、現実的な落としどころを考えることも必要です。 また固定資産税の増額通知、修繕費の見積書、周辺の家賃相場データなど、根拠となる資料も準備しておきましょう。併せて「いつから値上げするのか」「いくら値上げするのか」「入居者への説明資料を誰が用意するのか」なども管理会社と決めておくと、交渉を進めやすくなります。 3.管理会社から入居者へ丁寧に説明してもらう 値上げの理由や条件を整理できたら、管理会社を通じて入居者へ通知します。通知では、変更後の家賃額や適用開始時期だけではなく、値上げをお願いする理由も分かりやすく伝えることが大切です。 家賃の値上げは口頭だけで伝えるのではなく、書面で通知しましょう。口頭のみでは「言った・言わない」のトラブルになりやすく、内容が正確に残りません。通知書を作成し、値上げの理由や改定後の賃料、適用開始日、回答期限などを明記しておきます。文面が強すぎると入居者に不安や反発を与える可能性があるため、管理会社と相談しながら、丁寧な表現を心掛けましょう。 なお、入居者と直接交渉する行為は、非弁行為に該当するため管理会社では行えません。管理会社が担うのは通知や説明、入居者の意向確認のみになるため、条件調整が難航する場合は弁護士などの専門家への相談も検討してください。 4.相手の事情や反応を踏まえて着地点を探る 家賃の値上げ交渉では、一方的に条件を伝えるだけではなく、入居者の事情や反応を踏まえて着地点を探ることも欠かせません。入居者にとって家賃の値上げは毎月の支出増につながるため、すぐに受け入れてもらえないケースもあります。 例えば、値上げ額が大きい場合は段階的に引き上げる、適用開始時期を数カ月後にする、更新時期に合わせて改定するなど、入居者が受け入れやすい条件を検討する方法があります。状況によっては、一時的に据え置く代わりに次回更新時に改めて協議する、といった対応も考えられるでしょう。 また家賃の金額だけではなく、値上げの開始日や支払い方法についても合意が必要です。管理会社と入居者の反応を共有しながら、双方にとって無理のない落としどころを探りましょう。 5.合意内容は必ず書面で残す 入居者と合意に至った場合は、合意内容を必ず書面で残しましょう。口頭で合意しただけでは、後から認識の違いが生じる可能性があります。 書面には変更前の家賃と新しい家賃、適用開始日、支払い方法、その他交渉で決まった条件などを明記します。一般的には「賃料変更合意書」や「覚書」を作成し、オーナーと入居者の双方で署名・捺印を行います。 書面を残しておけば、将来の誤解や紛争を防ぎやすくなります。管理会社にも控えを共有し、次回更新時や入金管理の際に確認できるようにしておきましょう。 家賃の値上げを検討しやすいタイミング 家賃の値上げ交渉を行うには、周辺相場の調査や根拠資料の準備、管理会社とのすり合わせ、入居者への通知・説明など、複数のステップが必要です。思い立ってすぐに家賃を変更できるわけではないため、検討を始めるタイミングも重要になります。 タイミングを誤ると、入居者に十分な説明ができなかったり交渉期間が短くなったりして、トラブルにつながる恐れがあります。ここでは、家賃の値上げを検討しやすい主なタイミングを3つご紹介します。 契約更新の4〜5カ月前 退去後に新たな募集を行うとき 周辺相場や維持コストが変化したとき 契約更新の4〜5カ月前 既存の入居者に家賃の値上げを交渉する場合は、契約更新の4〜5カ月前を目安に検討を始めるとよいでしょう。 家賃の値上げ通知については、法律上「何カ月前までに通知しなければならない」といった明確な期限が定められているわけではありません。しかし、契約満了や更新の直前に突然値上げを伝えると、入居者の不信感を招きやすく、交渉がこじれる原因になります。 一般的には、契約満了の2〜3カ月前までに書面で通知するケースが多いです。しかし実際には、通知前に周辺相場の調査や管理会社との打ち合わせ、値上げ額の検討、通知書の作成などを行う必要があります。そのため、通知の2〜3カ月前ではなく、さらに余裕を持って4〜5カ月前から準備を始めておくのがおすすめです。 また早めに通知をしておけば、入居者が値上げに納得できず引っ越しを検討する場合、次の物件を探す時間を確保できます。オーナー側にとっても、新たな入居者を募集する準備期間を確保しやすくなるでしょう。 退去後に新たな募集を行うとき 既存の入居者が退去して空室になったタイミングも、家賃を見直しやすい時期です。新たな入居者を募集する段階であれば、入居者との値上げ交渉が不要なため、周辺相場や物件の状態に合わせて募集賃料を設定しやすくなります。 特に、退去後に原状回復だけではなくリノベーションや設備交換を行う場合は、賃料を見直すきっかけになります。室内の使い勝手やデザイン性、設備の利便性が高まれば、従来より高い賃料でも入居希望者に選ばれやすくなる可能性があります。 ただし募集賃料を高く設定しすぎると、空室期間が長引く恐れがあります。退去後に家賃を上げる場合も、周辺の類似物件や成約状況を確認し、相場から大きく外れない範囲で設定することが大切です。 周辺相場や維持コストが変化したとき 周辺相場や維持コストが変化したタイミングも、家賃の値上げを検討しやすい時期です。 例えば、物件周辺で再開発が進んだり新しい駅や商業施設ができたりすると、エリアの利便性が高まり、周辺の家賃相場が上昇することがあります。現在の家賃が周辺相場より低くなっている場合は、相場との差を根拠に見直しを検討できるでしょう。 またインフレによって修繕費や管理費、資材費、人件費などが上がった場合や、地価上昇に伴って固定資産税・都市計画税の負担が増えた場合も、家賃を見直すきっかけになります。こうしたコスト増はオーナーの努力だけでは避けにくいため、先述した通り、合理的な理由として説明しやすいケースです。 固定資産税評価額の評価替えが行われるタイミングや、再開発の住民説明会が開催されるタイミングがあれば、管理会社と家賃の値上げについて相談しましょう。また、投資用物件のあるエリアの市況や管理費用の推移を定期的に確認しておくことも重要です。 家賃の値上げ交渉を成功させるポイント 入居者との合意形成ができ、家賃を増額できれば、毎月の家賃収入が増え、キャッシュフローの改善につながる可能性があります。家賃の増額を成功させるためにも、以下のポイントに気を付けながら準備を進めましょう。 値上げ額は入居者にとって無理のない範囲にする 入居者にもメリットがある条件を検討する 書面で事前に通知し、必要に応じて口頭でも誠意を示す 値上げ額は入居者にとって無理のない範囲にする 家賃の値上げ額は、入居者にとって無理のない範囲に設定することが重要です。 周辺の家賃相場と現在の設定額に大きな差がある場合でも、いきなり相場水準まで一気に引き上げると、入居者の不信感や退去につながる可能性があります。例えば、現在の賃料が周辺相場より3万円安いからといって、次回更新時に一度で3万円の値上げを求めると、入居者にとっては大きな負担になります。 値上げ幅が大きくなる場合は、契約更新ごとに数%ずつ段階的に増額するなど、入居者の負担感を軽減する方法を検討しましょう。無理のない範囲で見直すことで、入居者との関係を保ち、空室リスクを避けながら、家賃を適正水準に近づけられます。 入居者にもメリットがある条件を検討する 家賃の値上げ交渉では、オーナー側の事情だけではなく、入居者にとってのメリットも併せて提示すると、納得してもらいやすくなります。 例えば、古くなったエアコンや給湯器を交換する、インターネット環境を整える、防犯設備を見直すなど、住みやすさにつながる改善を行う方法があります。また次回の更新料を1回分無料にする、値上げ開始時期を数カ月後にするなど、金銭的な負担を和らげる条件を提示するのも選択肢です。 入居者は、家賃が上がるなら引っ越した方がよいのではないかと考えることがあります。そのため、値上げ後も住み続けるメリットを感じてもらえるかが重要です。引っ越しにかかる敷金・礼金、仲介手数料、引っ越し代などと比較して、現在の物件に住み続ける方が負担を抑えられると伝えられれば、交渉が進みやすくなるでしょう。 書面で事前に通知し、必要に応じて口頭でも誠意を示す 先述した通り、家賃の値上げを申し入れる際は、事前に書面で通知しましょう。通知書には、値上げ後の家賃額や適用開始日の他に、値上げに至った経緯や理由も分かりやすく記載します。オーナー側の要望を一方的に押し付けるのではなく、入居者に失礼のない丁寧な文面にすることが大切です。 書面で通知すれば、後から「聞いていない」「内容が違う」といった認識違いを防ぎやすくなります。日本郵便の内容証明のように、いつ、どのような内容の文書を送ったかを証明するサービスを利用するのも方法の一つです。 また書面だけではなく、必要に応じて管理会社経由で口頭でも補足説明をしてもらうと、入居者の不安を和らげやすくなります。日頃から住んでいただいていることへの感謝を伝えた上で、やむを得ず家賃の見直しをお願いしたい理由を丁寧に説明してもらいましょう。 なお、家賃の値上げ交渉の成否は日頃の管理状況にも左右されます。共用部の清掃が行き届いているか、設備トラブルや入居者からの連絡に小まめに対応しているかといった印象は、交渉時の受け止め方にも影響します。普段から丁寧な管理を続けておくことが、家賃見直しの交渉を進めやすくする土台になるでしょう。 家賃の値上げにはリスクもある? 家賃の値上げ交渉は、毎月の収入改善につながる可能性がある一方で、いくつかのリスクも伴います。そのため家賃の値上げを検討する際は、収益改善のメリットだけではなく、想定されるリスクも理解した上で判断することが大切です。ここでは、家賃の値上げ交渉で注意したい主なリスクを解説します。 退去される可能性がある 先述した通り、家賃の値上げによって入居者が退去してしまう可能性があります。特に、値上げ額が大きい場合や、値上げの理由について十分な説明がない場合、入居者が「この家賃なら別の物件に引っ越した方がよい」と判断することもあるでしょう。 入居者が退去すると、次の入居者が決まるまで空室期間が発生します。空室中は家賃収入が途切れる一方で、ローン返済や管理費、修繕積立金、固定資産税などの支払いは続きます。不動産投資では家賃収入をローン返済の原資としているケースも多いため、空室が長引けば自己資金の持ち出しが増えたり、返済計画に影響が出たりする恐れがあります。 また新たな入居者を募集する際には、広告費や原状回復費、設備交換費などが発生することもあります。家賃を上げられたとしても、退去によって空室期間や募集コストが増えれば、結果的に収支が悪化する可能性もあるため注意が必要です。 こうしたリスクを避けるためにも先述したポイントを踏まえて、丁寧に交渉を進めましょう。 値上げに応じてもらえず法定更新となる可能性がある 契約更新のタイミングに合わせて家賃の値上げ交渉を行う場合、更新期日までに入居者と合意できないと、借地借家法第26条に基づき、従前の条件のまま契約が更新される可能性があります。これを「法定更新」と呼びます。 法定更新後は、原則として期間の定めのない賃貸借契約となります。そのため更新直前に家賃の値上げを申し入れても、入居者との合意が間に合わなければ、以前の家賃のまま契約が継続してしまう点に注意が必要です。さらに法定更新になると、次回更新という明確な区切りがなくなるため、更新料の扱いや今後の条件変更に影響する場合があります。 もちろん法定更新となった後でも、借地借家法第32条に基づき、現在の家賃が不相当であるといえる事情があれば、賃料増額を請求できる可能性はあります。 しかし、入居者が応じない場合は協議が長引いたり、調停・訴訟などの手続きが必要になったりすることもあるため、実務上の負担は小さくありません。 こうしたリスクを避けるためにも、家賃の値上げ交渉は更新直前に慌てて行うのではなく、余裕を持って準備することが大切です。周辺相場や税負担、維持管理コストなどの根拠を整理し、管理会社と連携しながら、入居者に納得してもらいやすい形で進めましょう。 家賃を適正な水準に見直し、収益改善を図って次の投資につなげましょう 家賃の値上げは、毎月の賃料収入を増やし、不動産投資のキャッシュフローを改善する方法の一つです。家賃収入が増えれば、管理費や修繕費などの運用コストをカバーしやすくなるだけではなく、予期せぬ修繕や空室リスクへの備えも確保しやすくなります。 ただし、家賃の値上げはオーナーの判断だけで一方的に進められるものではありません。周辺相場や税負担、管理コストの上昇など、入居者に説明できる合理的な理由を整理し、増額幅やタイミングを慎重に検討する必要があります。入居者との合意形成を目指すには、地域の賃貸事情に詳しい管理会社と連携し、納得してもらいやすい形で交渉を進めることが大切です。 エスリード株式会社は、関西エリアに密着し、30年以上にわたって新築分譲マンションの開発・販売を手がけてきた不動産デベロッパーです。入居率99.4%の実績に加え、豊富な経験に基づくノウハウを生かし、物件選定から購入後の賃貸管理までトータルでサポートしています。 家賃を適正な水準に見直しながら安定した収益を確保したい方や、物件購入後のフォローも継続的に依頼したい方は、ぜひエスリードへご相談ください。